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「トッツィー」を観た!(その2)〜映画版を再訪、今観るべき名作だ!

(承前)

ミュージカル「トッツィー」の“原作“、1982年の映画「トッツィー」、山崎育三郎の好演に刺激され、40年ぶりに見直した。(U-NEXT等で配信あり)

40年前の作品とは思えない現代性、ダスティン・ホフマンの名演、脇を固めるジェシカ・ラング(本作でアカデミー助演女優賞)、テリー・ガーが魅力的。デイブ・グルーシンが作曲し、スティーブン・ビショップが歌った劇中曲“It Might Be You“も名曲(結構ヒットしたと思ったが、ベスト10には入らなかったようだ)。

今こそ、是非観て欲しい映画である。

ここから先は、映画の内容(つまりミュージカルの内容)に触れるので、ご注意を。

演劇理論に長けていて、芝居に対して一家言持つ俳優のマイケル(ダスティン・ホフマン)。これまた売れない劇作家のジェフ(ビル・マレー)と同居している。二人の友人でありなかなか芽の出ない女優サンディー(テリー・ガー)もドラマに絡んでくる。

このテリー・ガーは同年公開コッポラ監督の「ワン・フロム・ザ・ハート」トム・ウェイツとクリスタル・ゲイルの挿入歌も素晴らしい)に主演しており、当時私の友人が”魅力的”と絶賛していた。その頃はあまりピンと来なかったが、40年経つとなんとなく分かる。

マイケルはサンディが獲得しようとしていたTVドラマの役に、女装して挑戦、ドロシーという名の”女優”として、みごとオーディションに合格する。そして。。。。。

そもそも”トッツィー〜Tootsie”とはなにか。女性に対する”お嬢さん”とか”おねえさん”という感じの呼びかけ言葉である。

劇中、ダスティン・ホフマン演じる”ドロシー”は、ディレクターから「トッツィー!」と呼びかけられ、こう反応する。

「My name is Dorothy. Not "Tootsie," not "Toots," not "Honey," not "Sweetie," not "Doll."」

自分には“ドロシー“という名前があるのだから、そう呼べと社会的には上位に位置するであろう(少なくとも本人はそう考えている)ディレクターに対して、啖呵を切るのである。

私の記憶の中にある「トッツィー」は、ダスティン・ホフマンの素晴らしい演技に彩られた、良質のラブ・コメディだった。もしかしたら、当時はそうした見方しかできなかったのかもしれない。

改めて見ると、ジェンダー・ギャップ、芸能界に巣食う性的ハラスメント、立場を超えた共感性(エンパシー)といった、今現在における課題・問題がラブコメの後ろ側に流れているのだ。

こうした問題を気づかせるきっかけとして、ダスティン・ホフマンの女装がある。つまり女性になることによって、女性の立場に立つことによって見える世界を表現していたのである。

なお、監督はシドニー・ポラック。俳優のエージェント役として出演もしている。本作ではノミネートのみだったが、85年の「愛と哀しみの果て」でアカデミー監督賞及び作品賞を獲得する。

この映画をミュージカル化したのは2018年、ブロードウェイ進出が2019年。トニー賞のミュージカル作品賞はノミネートにとどまったが主演男優賞を獲得した。よくぞ、この映画に目をつけたものだと思う。その背景には、上述のような問題が引き続き解決していなかったということもあるだろう。

舞台版は、改めてこうした側面にも光を当てつつ、楽しい舞台に仕上げている。骨格はほぼ映画を踏襲しているが、映画版のドロシーが出演するのはTVドラマだが、舞台版はブロードウェイ・ミュージカルとし、“バックステージもの“というコンセプトを維持している。

2つの「トッツィー」、どちらも素晴らしい


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