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「へうげもの」古田織部の生涯とは〜ようやく読み終えた“名作マンガ“

中条省平の「マンガの教養〜読んでおきたい常識・必修の名作100」(幻灯舎新書)という本がある。私はそれなりにマンガは読んできたつもりだが、取り上げられた100作には、そもそも聞いたことがないという作品が少なからず含まれている。ある時期から、新しい作品をほとんど追いかけなくなったことが大きい。

知らない“名作“がこんなにあるのかと考えつつ、まず気になったのが、山田芳裕の「へうげもの」(講談社モーニングKC)である。

“へうげもの“の読みは“ひょうげもの“、“ひょうげる“とは<おどける。ふざける>(広辞苑第七版)という意味である。

「へうげもの」の主人公は、織田信長〜豊臣秀吉〜徳川家康の時代に生きた武士・古田左介、彼は同時に茶人古田織部でもある。

古田織部とはどのような人物か。中条氏同様、辻惟雄著「日本美術の歴史」(東京大学出版会)から引いてみる。千利休について、装飾を前面に出す「かざり」に対する、無装飾「わび」の推進役としながらも、彼の侘び茶は、<「反かざりのかざり」という逆説を孕むものであった>とする。そして、利休の死後、<弟子の古田織部らによって再び「かざり」の世界と交流し、日本人の美意識と装飾感覚に幅と深みを与えることになる>。

千利休を基礎としながら、古田織部は「剽軽(ひょうげ)」、遊び心を取り入れながら、新しい文化・美術を創出していく。一方で、武人としての古田織部は、織田・豊臣・徳川と変化する権力者と折り合いをつける。

芸術というものが発展するためには「平和」が重要である。同時に、為政者の理解・支援が欠かせない。また、芸術・文化は“ソフトパワー“として「平和」に貢献することができる。古田織部の行動の軸はそこにあったのではないかと感じる。

このマンガを読むと、織田・豊臣・徳川という歴史の流れを楽しむとともに、それが日本の芸術・文化の発展にどう影響を及ぼしたのか、その流れの中における千利休、そして後継者である古田織部の役割を見ることができる。

それにしても全25巻、長かった。登場人物が多い、セリフも細かい、中条氏の紹介がなければ私の好みとは言えない画風、これらが相まって、読書のスピードが上がらなかった。

それ故か、吸収できたもおも多かったように思う。古田織部を中心としながらも、本阿弥光悦・俵屋宗達などなど、「日本美術の歴史」の登場人物らが花を添えてくれるのも面白い。

マンガ自体も、相当に“へうげもの“で弾けている


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