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旅の記憶34〜大丸東京駅の行列と香港のクッキー

清水ミチコの朝日新聞の連載に、東京駅で長蛇の列ができるチョコレート屋の話が書かれていた。行列にはさほど驚かなかったが、店内の「お一人さま5万円まで」と書かれた貼り紙に目を見張ったとのこと。チョコに5万円以上かける、<そこまで熱狂的なチョコレートファンはいるのだ。いったいどんな人生なんだろう>(10月27日付「清水ミチコ まあいいさ」より)と書く。その後、彼女は商品の詳細を調べようとインターネットのサイトを閲覧するのだが、そこにあったのは、<「高額での転売お断りいたします」でした。自分が知らなかったチョコレートの世界に、さらに秘密のレートまであったことに2度ビックリでした>。

物好きの私は、昼休みに東京駅の大丸を訪れた。きっとここだろうと、いつも行列が絶えない店に近づいてみると、店外まで続く列の最後尾のプラカードに「ご購入金額を上限5万円とさせていただきます」との表示があった。これは、「ニューヨークシティサンド」なので、もしかしたら清水ミチコが目撃したものとは違うかもしれないが、とにかくこうした制限があることは確認できた。多分に高値転売の防止だろう。

3年間駐在していた香港のクッキーを思い出した。2013年頃の話である。当時、「ジェニーズ・ベーカリー」のクッキーが人気を博しており、私の住んでいたアパートの近所の店は連日長蛇の行列だった。缶のデザインも可愛らしく、値段もさほど高くないのでお土産にちょうど良い為、中国本土からの観光客に人気で、私も数度購入した。

ある日、クッキー店のすぐ近くの別のお店で、同じクッキーが高値で販売されていることに気がついた。その店の店員に、同じジェニーズ・クッキーかと尋ねると、「そうよ、多少高いけれど、並ばずに買えますよ」と、高値転売に悪びれる風はまったく無かった。

日本人は高値転売を“悪“と決めつけがちだが、経済合理性から考えると問題ないだろうとするのが香港人である。文化の違いを感じた事象だった。

しかし、並ぶ時間の無い人にとっては、多少のプレミアムを払ってすぐ買えるのであればありがたい。プレミアムが高すぎると売れないので、自然に妥当なレベルに収斂する。東京ディズニーランドでも、アトラクション等に優先的にアクセスできる有料サービスを導入している。同様に、菓子屋が「+50%払うと並ばずに買えます」というサービスを始めると何が起こるのだろうか。

そもそも、日本において菓子の高値転売は法律違反なのか。原則合法、ただし消費期限切れなど、健康を害する恐れがある場合は、食品衛生法に引っかかる可能性があるようだ。また、通販サイトはそれぞれのルールにより禁じられているケースがある。

メーカーが「転売目的での購入禁止」などと明記すれば、詐欺罪等に問われる可能性があるが、独占禁止法を気にしてそこまで踏み込む会社はあまりないようだ。

あの香港のクッキーは今どうなっているのだろうと思い、ネットで検索してみると、今や日本にも輸入されている。経済原理というのは、こういうものだ

*旅の記憶33はこちら


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