映画「バービー」は奥が深い〜“楽しさ“に包まれた現実とは
20数年前のこと、家族でヨーロッパを旅行している時、街中に貼られたポスターに二人の娘が大笑いしていた。何の商品だったか忘れたが、その名が“Bimbo“だった。可笑しい理由を聞くと、英語で“bimbo“とは、金髪・セクシーなおバカな女性のことを指すと教えてくれた。
ジーニアス英和大辞典を引くと、<(頭のよくない)セクシーな美女、グラマーな女>と書かれていた。
映画「バービー」の中で、人間界にやってきた“バービー“(マーゴット・ロビー)は、人形の持ち主だったサーシャ女の子サーシャを探しあてるが、サーシャは“バービー“(正確にはステレオタイプ・バービー)に対して、「あなたは“bimbo“だ」と批判する。
かつては、女の子の憧れであった存在が、“ルッキズム“、外見至上主義批判の流れの中では、軽蔑の対象となったのだ。
こうした変化を反映し、マテル社は“多様“なバービーを発売する。映画「バービー」におけるバービーランドにも、実際は様々なバービーが存在する。ステレオタイプ・バービーは、その一人にすぎないのだが、普通の人が“バービー“として思い浮かべるのは彼女のようなタイプであろう。金髪、完璧なスタイルの彼女の体に異変が起こる。脚部にcelluliteという皮下脂肪が。。。。その問題を突き止めるべく、金髪の“バービー“は人間社会に旅立っていく。
そんな“バービー“に付き添うのが、これまた“多様“な“ケン“の中の一人、ライアン・ゴズリング演ずる“ケン“である。
そこから始まる、ドタバタ・コメディなのだが、人間社会は男性優位の社会で、“ケン“の目を開かせる。そして、“ケン“主導の元、バービーランドは。。。。
あくまでも、ポップで楽しい作品であり、夏休みに観るには最適の映画である。それが大前提であるとして、映画「バービー」は奥が深い。
面白さ、映像のキュートさの中に、ジェンダー問題を提起している〜とすれば単純なのだが、監督のグレタ・ガーウィグ、制作にも名を連ねるマーゴット・ロビーら、今の映画界における新たな才人たちは、そんな簡単な作品にはしない。
例えばである、
“バービー“が登場した当時、子供の人形と言えば、赤ちゃん人形だった。そこに、確かに“ステレオタイプ“と言える、女の子が“憧れる“、“白人“女性の人形を世に送り出した。映画の中では、その産みの親の女性、マテル社のルース・ハンドラーを登場させている。これは、何を意味するのだろうか。1959年という男性優位の時代において、女性のアイデアを取り入れ、「女の子だって何にでもなれる」というコンセプトを世に出した、ダイバーシティの効果を表しているのか。それとも、閉じられた社会の中の“ステレオタイプ“を作り出したのは、女性自身であると言いたいのか。
あるいは、
先日、グレタ・ガーウィグの2017年の監督作品「レディ・バード」を紹介した。青春映画でありつつ、母娘の物語である。そして、この「バービー」にも、サーシャとグロリアの親子が重要な役回りで登場する。私には、この二人が重要な存在に見える。
「プロミシング・ヤング・ウーマン」の監督、エリザベス・フェネルはミッジという妊婦の役で登場するのだが、この記事によると、バービー人形の世界では、妊婦ミッジの人形は批判にさらされ、発売中止に追い込まれたらしい。記事では、“ネタ“とされているが、そうなのか?
「バービー」は底抜けに楽しい映画であり、ただし単なるおバカコメディー(すみません、もしかしたらと疑ってました)ではなく、大人の鑑賞にも十分耐える作品だと思う。
騙されたと思って、映画館へどうぞ
余談だが、人間界に向かおうとする“バービー“、ハイヒールを履くためにかかとが上がった状態の足だったのが、フラットになる。ヒールに代えて彼女が足を入れるのは、私が愛用しているビルケンシュトックのサンダル〜アリゾナ。映画の後半で、ピンクカラーのアリゾナが登場するのだが、公式サイトではその色は出ていない。きっと売れるのに
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