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著…惠 隆之介 『敵兵を救助せよ! 英国兵422名を救助した駆逐艦「雷」工藤艦長』

 こんにちは。

 敵兵の命を救う…という実際にあった出来事についての本をご紹介します。

 これがどのような救助であったか、出来る限り要約します。



 概要

 第二次世界大戦中、インドネシア・スラバヤ沖で英軍の駆逐艦『エンカウンター』が沈没。

 エンカウンターの乗組員は救命ボートで脱出。

 英軍の駆逐艦『エクセター』の乗組員たちも含め、422名の英兵が漂流。

 しかし、沈没した艦から重油が大量に流れ出していた上、戦闘海域であったためか、SOS信号を受信していたはずの英軍は救助に現れず。

 漂流する英兵たちは怪我・猛暑・疲労・不安に苦しみながらも救助を待ち続けた。

 漂流を始めてから20時間以上経った後、日本の駆逐艦『雷』が英兵たちを発見。

 現場はいつ敵潜水艦から攻撃を受けるかわからない戦闘海域。

 ジュネーブ条約ではいつ攻撃を受けるかわからない状態においては漂流者を放置しても構わないことになっていた。

 しかし、『雷』工藤艦長は救助を決断。

 『雷』は救助活動中を示す国際信号旗を掲げた。

 英兵の数は『雷』乗組員の数(220名ほど)を遙かに上回っていたため、救助すれば反乱を起こされる可能性もあったが、『雷』は現場に漂流していた英兵422名全員を救助。

 疲れ果てて海へ沈んでいこうとする英兵がいたが、『雷』乗組員が海に飛び込んで助けた。

 『雷』は英兵たちを停泊中のオランダ病院船『オプテンノール』に引き渡した。




 この本はなぜ『雷』が英兵を救助できたのか考察しています。

 工藤艦長がリベラルな考え方の持ち主だったこと。

 英兵を発見した際、『雷』が単艦行動を取っていたため、艦長の判断で行動できたこと。

 救助される際、英兵たちが我先にとは集まって来ず、秩序を保って救助されたこと。

 こうした様々な幸運がこの救助を可能にしたことが、この本を読むと分かります。

 日本海軍はこの救助の件を隠蔽、工藤艦長も身内にさえ全く語らなかったそう。

 きっと、この件があきらかになれば世論に影響しかねないという政治的判断もあったでしょう。

 また、戦争で負傷したり、家族や戦友が戦死した人の気持ちを思えば、公には出来なかったでしょう。

 第二次世界大戦における日本のその後の負けっぷりを考えれば、敵兵を生かした者の存在は恥だという意見さえあったかもしれません。

 少しでも敵の戦力を削いでおけば良かったのに、と。

 でも、かっこいいと思いませんか?

 わたしはこの救助、かっこいいと思います。

 「助けてやれ」と言った工藤艦長もかっこいいし、その声に従った『雷』の乗組員もかっこいいし、反乱を起こすこともなく大人しく救助された英兵も、みんながかっこいい。

 戦争をしているからお互い殺し合う立場ではあるけれど、戦闘不能に陥っているならそれは敵兵ではなく漂流者であり、困っている人間を助けるのは当然だ…という武士道精神を感じます。

 わたしは工藤艦長や乗組員たちにその時のことを直接聞いたわけではないので、あくまでも想像ですが、きっと「助ける」「助けない」を選択する時、迷いが0だったはずは無いと思います。

 救助のために無防備になった隙をついて『雷』が敵潜水艦にやられるかもしれないし、英兵を助けたとしてもいつかまた英兵と対峙した時はこちらが殺されるかもしれない。

 だから「助けない」を選択したとしても、きっと誰も責めなかったはず。

 それでも、今助けられる命を全力で助けた。

 もしかしたら英兵の方は『雷』に発見された時に「殺される」と覚悟したかもしれませんが、「敵兵」という生き物ではなく「同じ人間」として扱われてきっと驚いたでしょうね。

 この先の未来へ語り継いでいくのは禍根ではなく、こうした精神性でありたいです。

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