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三浦秀雄『戦士に愛を』

 いつ終わるとも知れぬ苦痛。

 虚しさ。

 絶望。

 そんな中でも希望を見い出そうとする「人」の心を描いた漫画です。


 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、初期のあらすじに関するネタバレを含みます。



 初めは、人間と人間が戦争をしていました。

 やがて、人間と機械が殺し合いを始めました。

 人間は機械を倒すために毒を使いました。

 その毒は大地を汚染し、甚大な被害をもたらしました。

 そこで、人間は「人造人」を造り上げました。

 人間が生きやすくなるように。

 人造人は危険な労働を強いられました。

 人間が都合良く使い捨てられるようにするために、人造人の寿命はたったの四十年に設定されています。

 しかし。

 人間に働きを認められれば、人造人は寿命を伸ばすことが出来ます。

 働きを認められる方法…。

 それは、兵士になって戦うこと。

 その敵となる兵士もまた、人造人。

 人造人同士で、来る日も来る日も来る日も戦い続けるのです。

 個人的には何の恨みもない、ただ「敵の側にいる」というだけの相手を、お互いに殺し続ける日々。

 仲間を失い、傷つき疲れ果てた兵士たちに、味方の軍の上層部は命令し続けます。

 戦え、と。

 もっともっと戦え、と。

 時には囮となって犬死にしろ、と。

 …けれど、戦っても戦っても、終わりは見えてきません。

 いつかはこの長く続きすぎた戦争に終止符が打たれるべき。

 けれど、敵も、味方も、もはや戦争を終わらせる機能すら失くしています。

 戦っても、戦っても、終わりません。

 敵も味方も、どんなに倒れても、また補充されます。

 人造人は、死んだら遺体をバラバラに砕かれ、溶かされて、新しい人造人の材料にされるそうです。

 また、殺し殺されるために。

 生きても地獄。

 死んでも地獄…。



 ある時、兵士の一人が言った、

今日の俺は昨日の俺よりクソだ
明日の俺はもっとクソ野郎になってる

(三浦秀雄『戦士に愛を』1巻から引用)



 というセリフが鮮烈な印象を与えます。

 まるで、この地球上で何度も何度も何度も実際に繰り返されてきた戦争の歴史のよう。

 今日までの人類はクソだ。

 明日の人類はもっとクソになっている。

 …という風にならないで欲しいけれど、もしかしたらこの漫画の世界が現実の未来に待ち構えているかもしれません。

 この漫画には、他にも様々な人が登場します。

 特に戦闘能力が高くなるよう改造された人造人「仮面兵」(その寿命はわずか二十年。延命は不可能)。

 人間だけれど「仮面兵」と同じくらい強くなるよう体をいじられた「強化人間」。

 性的な玩具にするために、体が弱く、寿命も極端に短い人造人の子どもたち。

 …いつか本当に人類がこういう人を生み出しそうでゾッとしますよね。

 科学技術さえ追いつけばやりそうなことばかり。

 この漫画で人間が大地を汚染した毒は、きっと核なのでしょうし。

 しかし、そんなクソにクソを塗り重ねた世界でも、「自分の生き方も死に方も自分が決める」とこの世界を変えようと行動するキャラクターたちもいるのが、この漫画の救い。

 読むのがしんどくてなかなか読み進められないけれど、結末まで見届けたいです。

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