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「背中を突き飛ばされて留学へ」【インタビュー記事#13:[自分の中に毒を持て]】

大切な一冊をおすすめしてくれた人と、1冊の本を出発点として人生を語り合うインタビュー記事第13弾。今回は、余白の二人のサークルの先輩であり、世界中を飛び回るくりさんにお越しいただきました。

おすすめいただいた本は『自分の中に毒を持て』。

おすすめのメッセージはこちら↓

留学に悩んでいた時、人間関係に翻弄されていた時、「己は何者か、何をしたいのか」それだけをシンプルに考えさせてくれました。本書は背中をそっと押すというより、ガツンと突き飛ばしてくれる兄のような存在です。

トライを続けた学生生活

本屋余白(以下、「余」):お久しぶりです。今日はよろしくお願いします。
くり様(以下、「く」):久しぶりー!1年ぶり?
余:多分それくらいですね。ずっと海外にいるから会えない(笑)(注:くり様は余白の二人のサークルの先輩)改めて自己紹介をお願いします。
く:今は大学3年生で、海外旅行が好きなくりです。国際系の団体に入っていました。留学先は香港でした。
余:たくさんの海外経験をされていると思うのですが、冒頭に大学生活を整理させてください。
く:そうだねー。大学1年生の春から2年生まで、余白の二人と同じ国際系の団体に所属していました。
留学関連では、ワシントンの大学に2年生の秋から3年生の春まで行く予定だったけどコロナで無くなっちゃった。その代わりに2年生の3月から3年生の6月まで、その大学にオンライン留学をしていました。コーディングを勉強していたので、3年生の秋にはUXデザインのブートキャンプでアムステルダム・ロンドン・パリ・ベルギーに行って、3年生の2月から香港の大学に留学をして、約半年経った今年の6月に日本に帰ってきました。
余:多忙だ。。UXデザインのブートキャンプって何ですか?
く:ユーザーの根本的なニーズに寄り添った顧客体験を設計するのがUXデザイン。そのトレーニングプログラムって感じです。
余:そういえば以前プログラミング勉強してましたね!
つまり留学で留年してまだ3年生ってことですね。
く:単位次第ですね(笑)
余:就職活動はどうしているんですか?留学前にやっていましたか?
く:まさに就職活動で悩んでいるときに読んだのがこの本なんです。

背中を突き飛ばされて留学を決断

く:大学2年生の2,3月、就活をするかとても迷っていました。周りは就活する人が多くて、何なら3月のスタートでも遅いくらいの感じでした。それでも自分は大学前から抱いていた夢である海外に行きたかったんです。
余:その時期は国際系団体を卒業した時期でもありますよね。
く:うん、今までのめり込んでいたものから放り出されたから、どうしようって迷っていました。
さらに、人間関係にも悩んでいる時期でした。振り返ってみると、色々なことが重なっていたなと思います。
余:環境が変化する境目の時期に読んだんですね。これはどんな本ですか?
く:太陽の塔などで有名な岡本太郎さんの書かれた「自分の中に毒を持て」という本です。
余:どんな内容の本ですか?
く:「毒を持て」という言葉が表していると思っています。
社会の中に埋もれて、楽な道を選択するのって簡単。自分を守りたいから安全な道を選びたくなるけど、この本はそうじゃなくて「嫌われなさい。嫌われないと面白くないじゃん。」と書いています。
余:「毒」が指すものが気になります。
く:私は、「自分の中の毒」というのは、理性では発したり行動に移すことが危険だと分かっていても、本能的に湧き出てくる感情だと思います。誰しも他人に見せてはいけないものを心の中に秘めていると思います。そういった「毒」すらも自分で受け止めることを肯定する本ですね。
余:なるほど。その毒とくりさんはどう向き合っていますか?
く:離れたいな、蓋をしたいな、という気持ちはある。そこから逃げている部分は自分でも感じます。
私は、自分をどれだけ出して相手をどれだけ引き出せるか、というある種の緊張関係が対人関係には必要なのかなと思っています。本音を伝えて傷つけることを避けてしまいがちですが、自分の毒を無視してただ「いい人」であろうとしたら、それは相手に対して失礼なことだと思います。
余:なるほど。この本を読んだときに人間関係に悩んでいたとのお話もありましたので、とてもリアルに聞こえてきました。
視点を変えると、おすすめメッセージに「背中をそっと押すというよりガツンと突き飛ばしてくれる兄のような存在」という文章があって面白いなと思いました。これはどういうニュアンスの違いなのでしょうか?
く:この本に書かれていることの全ては断定なんです。岡本さんの主張を全面にぶつけてきてくれる。曖昧で全ての人に適用しそうな理論ではなく、岡本さんが思っていることをストレートにぶつけてくれる。それがすごく好きですね。
余:好きな文章はありますか?
く:
「自分自身の生きるスジは誰にも渡してはならないんだ。この気持ちを貫くべきだと思う。どこにも属していないで、自由に自分の道を選択できる若者だからこそ決意すべきなんだ。新しく出発するチャンスなのだから。夢に賭けても成功しないかもしれない。そして、そのとき、ああ、あのとき両親の言うことを聞いておけばよかったと悔やむこともあるかもしれない。でも、失敗したっていいじゃないか。」

この人が言わなかったら青臭いみたいな感じになりそうだけど、ここまでストレートだとかっこいいなって思います。
余:かっこいい。。ではこの本に背中を突き飛ばされたこともあって、就活ではなく留学を決断したのでしょうか。
く:そうですね。色々な理由で周りからは留学は微妙だと言われていましたが、「今、行きたいんだ」という直感、ある意味での「毒」を優先しました。

衝動と自立の両立の難しさ

余:実際に留学に行ってみてどうでしたか?
く:勿論いい面もありましたが、今は湧き出るものが感じられなくなっているかもしれないです。海外に行きたい、留学に行きたいっていう軸でこれまで生きてきた。それを達成した後で、世界が広がり選択肢が増えた分、何に注力すればいいかわかんないんです。
余:ちょっと意外な答えでした。魅力的な選択肢が多すぎるんですか?
く:いや、そういうわけでもないんです。
というのも、今まで海外で旅をすることがすごく好きでした。バスで移動してる瞬間、町から別の街に移動してる瞬間がすごく楽しくて、これからどういう生活が始まるんだろう、というのがすごく楽しかった。
でもそれは一種麻薬的なものがあるのかなと思っていて、その自分を否定するつもりはないですが、「新鮮さ」にずっと身を置いていると、だんだん麻痺してしまうんです
常にあたらしい場所や人を求めて転々とすることは現実から目を背けていることなんじゃないか、と思ったりはします。
余:旅の効用を読んだ人間としては興味深い意見です。
く:今はどちらかというと「自立しなきゃ」という不安が大きくなってきました。
親にお金をかけさせたという不安もあって、自分でお金を出せてこその自由だと思うし、まずは自立して自分の地盤を固めようと思うんです。
毒に素直な衝動的な生き方が許されるのは、自立している人なのかなって思うんですよね。
余:おお、僕はもっとポジティブな結論が出ると思っていたので、ここに着地するのは想定外でした。
最後に、この本を一言で表すと?
く:自分が道に迷ったとき、自分の核ってなんだろうなと思ったときに読む本。こんなストレートに叱ってくれる本はない。自分を知らなきゃって思わせてくれる本ですね。
余:「ストレートに叱ってくれる」って素敵な表現ですね。
ズバズバ言われることって生活している中であんまりなくて、明確な主張をぶつけてくる本に対して「これは違うんじゃない?」と思うことが、その人の心にある毒を照らして、読者が毒に気付けるのかなと感じました。
今日はありがとうございました!
く:こちらこそありがとう!

編集後記

余白を始める前から知っていたかっこいい先輩の、悩みの部分を知ることができました。
このインタビューや本は、きっと多くの人に挑戦の勇気を与えてくれると思います。
自分の毒はきっともう自分の中に眠っていて、それを呼び覚ますことができるかにかかっているのではないでしょうか。
小澤としては、「常にあたらしい場所や人を求めて転々とすることは現実から目を背けていることなんじゃないか、と思ったりはします。」という言葉が深く刺さりました。衝動的な生き方に憧れたというのもあって余白を始めましたが、くりさんは僕たちの2・3周先の悩みに到達しているんだろうなと思いました。




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