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書店に勤める会社員のエッセイ

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エッセイ集『探してるものはそう遠くはないのかもしれない』にはあえて書かなかった、書店員っぽいエッセイはこちらに
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2017年11月の記事一覧

フリーアプリを入れたスマホを尻ポケットに入れながら。

フリーアプリを入れたスマホを尻ポケットに入れながら。

警察の拳銃は5発装填と言われるが、私のiPhoneも連写は5発までだ。
いつもシャッター音を消すアプリで写真を撮っているが、有料グレードアップをしていないから、5回に1回広告が表示される。それは左上の小さな×マークをタップしないと消えないため、必ず撮影が中断してしまうのだ。
今確認したところ、アプリで7314枚撮影していた。つまり通算1462回、見たくもない広告を見せられて、ともすれば大事なシャッ

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1銭も出ない内職とかやってます。

1銭も出ない内職とかやってます。

※少し文章を考えて訂正しました

子供の頃、お風呂掃除をすると、勉強机に500円の図書券が1枚置かれていた。

今考えると、そんな割のいいアルバイトはこの世にない。毎日やればよかった。

母親にしたら、500円玉をあげるのと図書券をあげるのでは、意味が違ったのだろう。しかし私にしてみれば、欲しいものがたいてい買える紙きれ、つまりお金とほとんど同義だった。

現在は図書券の発行が終わり、書店で買える

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今度は帯問題勃発

今度は帯問題勃発

川沿いに住む売れない小説家は、新刊に巻かれていて当たり前の帯を、あえて巻かないという目新しさに勝負を賭けた。はたして彼の本は、売れて重版がかかるのか、それとも水が戻った川に身を投げることになるのか。結果は『川沿いに住む売れない小説家は』をお読みいただくとして、それを書いた私が、来月自分の本を出す。

大失敗するかもしれないが、自分の本なら少なくとも作者には遠慮がいらない。そしてその挑戦にはお金がか

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川沿いに住む売れない小説家は⑤・完

川沿いに住む売れない小説家は⑤・完

『川沿いに住む売れない小説家は④』のつづき

そこそこのキャリアはあっても、売れない小説家のフォロワーなど、たかが知れている。

しかしその一連のツイートは、バズッた。

名のある小説家たちは、国内最高権威の文学賞選考委員である大御所作家と、国内最大手の出版社に気を使って、この件に関しては貝のように黙っていた。そこへ棺桶に片足を突っ込んだ小説家が「帯もったいない」「最高傑作って嘘だったの?」などと

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ミラノ風ドリアは現金で【電子マネー編】

ミラノ風ドリアは現金で【電子マネー編】

『ミラノ風ドリアは現金で』【クレジットカード編】のつづき

私が書店で働き始めた10年前には、すでにクレジット端末があった。だが交通系マネーが導入されたのは、それから何年か後である。クレジットカードのようにサインや暗証番号の入力が要らず、出てくる伝票の処理も簡単で、混雑時は本当にありがたかった。繁忙期など1日に200人の会計をしたこともあるが、全て現金だったら、170人が限界だったと思う。私はお札

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川沿いに住む売れない小説家は④

川沿いに住む売れない小説家は④

『川沿いに住む売れない小説家は③』のつづき

川沿いに住む売れない小説家の、命を懸けた最後っ屁みたいな小説は、ゲラを送った書評家からはまったく見向きもされず、編集者との信頼関係も壊れた今、宣伝やパブリシティの機会も皆無だった。

せっかく帯用にもらった最強コメントも、彼は宣言通り帯に使わなかった。

まさか、彼の心に深く刻まれるだけで終わるのか。

実際彼は、そのコメントを己に刻み込むつもりだった

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ミラノ風ドリアは現金で【クレジットカード編】

ミラノ風ドリアは現金で【クレジットカード編】

家賃を払い込んだら、現金が手元に410円しか残らなかった。だが、社会的信用をまだ失っていない私には、クレジットカードがある。

コンビニはもちろん、隣駅の大きなスーパーはクレジットカードが使える。給料日まであと10日もあるが、カードさえあれば大阪にだって仙台にだって行けるのだ。(ライブハウスのドリンク代だけなんとかすれば)いつも通りの生活である。

だが、ひとつだけ大問題があった。平日のランチだ。

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ビニール袋に続きまして、紙袋問題(未解決)

ビニール袋に続きまして、紙袋問題(未解決)

子供の頃、休日に連れて行ってもらった大型書店の帰り道は、私も親もそれぞれ紙袋を手に提げていた。
何冊かまとめて買ったとはいえ、子供が持てる重さである。今よりも紙の手提げに入れてくれるハードルは、明らかに低かった。

それから数十年後、書店で働くようになって、まず本の利益率の低さに仰け反った。私が以前働いていたアイスクリーム屋では従業員割引が30%で、半額じゃないのかよーと残念に思ったものだが、書店

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本屋のくせにコンビニで週刊誌を買う、愛社精神のかけらもない会社員です。

本屋のくせにコンビニで週刊誌を買う、愛社精神のかけらもない会社員です。

つい今しがたまで、職場の書店にいた。そこにも同じ週刊誌は並んでいたのに、つい地元のコンビニで、アイスや菓子パンと一緒に買ってしまうのを止められない。

さらに、読み切りの食べ物系コミックもホイホイ買ってしまう。まがりなにも大型書店の店員である私の物欲を、あのおもちゃのようなサイズの棚でよくもこれだけ刺激するものだと感心する。

コンビニには、基本的に本や雑誌専用の袋は用意されておらず、もちろんカバ

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