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#50 放送作家・寺坂直毅「胸騒ぎの広島デパート」(2022.2.18&25)

ばんばんいきますよ! 今回のお相手は放送作家の寺坂直毅さん。『星野源のオールナイトニッポン』『松任谷由実のオールナイトニッポン』『うたコン』などを担当する超売れっ子さんです。

寺坂さんスクショ①

とにかく愛にあふれた寺坂さんですが、中でもデパートへの愛は相当なもの。デパートにまつわるエッセイを書いたり、デパート本を出したりもしています。その名も『胸騒ぎのデパート』!

そんな寺坂さんがデパート愛に目覚めたのは、なんと広島がきっかけとか。

僕は宮崎の中心街にある毛糸屋さん「アイ・アム・テラサカ」が実家で、すぐ近くに「宮崎山形屋」というデパートがあったんです。それで幼稚園の頃から公園で遊ばずデパートで遊んでまして。で、小学校2年生のとき、僕が鼻炎で広島の楽々園に名医がいると聞いて、母と姉と僕の3人で広島に行ったんです。病院に行く前日に広島に着いたら三越、天満屋、福屋、そごう、サンモールとズラッと並んるじゃないですか! 宮崎のデパートはエレベーター1台なのに広島は4台。当時そごうにはシャンデリアもあって……そこで「大きいな! 興奮するな!」ってデパートへの愛に目覚めたんです

寺坂さんのデパート愛は止まりません。当時の思い出が次から次へと浮かんできます。

そごうの屋上に行ったら遊園地がありまして。モノレールみたいなのがありましたよね? それに乗って興奮して、次の遊具に走ったんです。そしたら子供とぶつかって歯が折れて、口の中が血だらけになって。そしたらそごうの人が救護室に連れて行ってくれて、「これはウチじゃ手に負えない!」って向かいのビルの歯医者に優先的に紹介してくれて。そのおかげで僕は歯をなくさずに済んだんです(笑)。あのときの広島そごうの優しさは忘れられないです!

すごいぞ、そごう! 話を聞いてると、なんかこっちまで嬉しくなってきます。

広島そごうはすごいデパートで。今はないと思うんですけど、3階のバスセンターに着いたとき、バスが出す排気ガスを店内に入れないため強力な空気のカーテンがあったんです。あれを浴びると広島に来たなって思いますね

正直、広島在住の我々より広島に詳しい寺坂さん。

福屋には最近までエレベーターガールがいたんです。福屋は被爆建築物で原爆が落ちたときも建物は残ってて、翌1946年の元日に営業を再開したんです。1階の正面玄関で日本酒を牛乳瓶に入れて熱燗として売って。当時はもちろんSNSはなかったから、「福屋が営業再開してるぞ!」っていうのが口コミで広がって、それが復興に影響したって聞きました

そうか~、知らんかった……って僕もカミさんも広島デパートのすばらしさを教えてもらうばかり。

では寺坂さん流デパートの楽しみ方は?

いいデパートでは靴下とパンツを買います(笑)。常に身に付けられるので。あとフロアガイドっていう店内案内図をコレクションしています。包装紙と紙袋も。福屋のFマークの青い包装紙も大好きですよ

これな!

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あとは匂いですかね? 1階に入ったときの香水と皮製品が混じった匂い。あれをプ~ンと嗅ぐと深呼吸します(笑)。これ、僕だけの習性かと思ってたら吉田拓郎さんがトーク番組で「福屋に行って匂いを嗅ぐことが楽しかった」って言っておられて。だから僕だけじゃないし、特に福屋はいい匂いがするんです! 三越は若干、地下のパンの匂いが混じるんです(笑)

いや、詳しすぎでしょう! ちなみに寺坂さんのオススメは?

鹿児島にある「山形屋」っていうデパートの上階に「山形屋食堂」があるんですけど、そこの名物の「焼きそば」は太麺のかた焼きそばに野菜のあんかけが乗ってて。鹿児島の人はそれにお酢をドバドバかけて食べてるんです。これはぜひ食べてほしいですね!

現在デパートの苦境が伝えられますが、そのへんはどう思われてるんですか?

なくなっていくのが寂しいし、そもそもお客さんが少ないですよね……。僕が初めて福屋やそごうに行ったときは、エレベーターがすぐ満員になって。4台あるエレベーターがなかなか来ないんです。それでエレベーターガールの人が「満員でございますんで少々お待ちください!」って言ってたのに……

現在、放送作家を生業にする寺坂さんの主戦場はテレビ・ラジオ。それとデパートにも共通する部分があるといいます。

僕は求人誌のテレビAD募集を見て入って、24歳くらいでテレビの作家になって。テレビ・ラジオとデパートってどこか似てるんです。どっちも「終わってる」とか言われるけど、必死で知恵を出して新しい価値を求めようとしているところか。あと僕は紅白歌合戦が大好きなんですけど、紅白ってファミリー層に向けて作られてますよね。お年寄りから小さい子供まで全員が楽しめる歌番組を作らなきゃいけない。百貨店も偏っちゃいけないところが近いと思ってて。それにどちらも見た目、箱だし(笑)

そんなデパート復活のカギを握るのは何なんでしょう?

原点に立ち返ると、デパートって買い物だけじゃなく、三越なんて劇場があったわけです。文化的なエンタテインメントの場所でもあったっていう。デパートは芸術の場所でもあり、文化を発信する場所として必要なんです!

確かに、かつては阪急が「宝塚歌劇団」運営し、西武が「WAVE」や「クラブクアトロ」を展開してましたもんね。文化芸術がデパートを救う。それ、非常に大事な提言のような気がします。

では最後に寺坂さんの夢&メッセージを!

僕は10年前に『胸騒ぎのデパート』って本を出したんですけど、そこからデパート業界は変わったので、もう1回同じ店を取材したいです。それで未来の希望が発見できれば。あと福屋にしても、三越にしても、そごうにしても、ゆめタウンにしても、実際見て、触って、匂いを嗅いでみることが栄養になるし、知識にもなります。いまコロナが大変ですけど、みなさんもデパートに行って、モノを買ってもらえればと思います!

寺坂さんスクショ②

2022.2.9 on-line

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