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#53 R65不動産・山本遼「死ぬまで自由に住みたい!」(2022.4.1&8)

ウチの会議は丁寧に見ていくといくつかのジャンルに分けられるのですが、その中のひとつが「起業家さん」シリーズ。広島県内で実験実証をしているスタートアップの方々をいろいろ追いかけていて、この頃の3連投がその流れでした。

今回の「R65不動産」さんと次回の「ONE SMILE FOUNDATION」さんも起業家さんです。「株式会社R65不動産」を立ち上げた山本遼さんは実は広島県出身。どんなことをしてる会社か、名前でなんとなくわかりますね。

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R65不動産は簡単に言うと、65歳以上の方に向けた賃貸の不動産会社です。なぜはじめたかというと高齢の方って部屋を借りるとき、孤独死、年金不安といった理由で断られるんですけど、それってすごく悲しいなと思って。僕のおばあちゃんも亡くなるまで元気に働いてたし、僕も最後は住まいのことで悩むより、自分の好きな暮らしをどうやって生き切るかを考えたいと思って。それで2015年に起業したんです

大学を卒業した山本さんはまず不動産会社に就職。そこで高齢者が部屋を借りづらい現実を目の当たりにしたといいます。

お店に来られた80代の方がいて。来た時点ですでに5軒目。ほとんど門前払いだったみたいなんです。そこから200軒ほど大家や不動産に電話をかけたけど、許可が出たのは5軒だけ。そうなると高齢者は施設に入るか家族と一緒に住むかしか選択肢がないじゃないですか?

その現実に山本さんは「こんなに借りられないもなんだ!?」と驚いた半面、自分もこれまで高齢者のお客様を断っていたことに気付きます。不動産業界では「年をとったら部屋は借りられない」という暗黙の了解があり、山本さんはそれを解消しようと会社にプレゼンするものの、返ってきた返事は「大事なのはわかるよ。でも今じゃないよね」。それを受けて「やりたいから辞めます!」と立ち上がったが25歳のとき。よく決断できましたね。

そのときは何も考えず(笑)。最悪ダメでもどこか拾ってくれるだろう、そこそこ売り上げ立てられるから大丈夫だろう、と思って辞めちゃったんです

うーん、この根拠なきポジティブシンキングが起業家の方の特徴なんですよね! てことで2016年「R65不動産」を法人化。お客さんが殺到するだろうと思っていたものの、半年反響ナシというカベにぶつかります。

ただ、このネーミングにはこだわりがあって。わかりにくいから「シニア不動産」にしたら?って言われたけど、イヤじゃないですか。自分が高齢者になったとき「高齢者不動産」って書いてあるところに行くのは。そこをわかりにくいものにしたくて、あえて「R65不動産」にしたんです。この前、イギリスの経済学者が取材に来て、「R指定みたいでいいね。大人に対する羨望というか」って言ってくださったのは嬉しかったです

しかし粘り強く続けているうちに周知が進み、今は22都道府県で35社の不動産会社と提携。業界的も「そろそろ高齢者にも貸した方がいいよね」という声がだいぶ出てきたとか。

ウチの最終目標は売り上げを立てること以上に「R65不動産」っていう事業自体がなくなること。今はまだ65歳以上は家を借りにくいけど、今後10年同じだとは思わなくて。団塊の世代が後期高齢者に入る頃には、借りられない物件は減って、わざわざ「R65不動産」と名乗らなくても普通に借りられるようになると思うんです。そんな社会になるよう一石投じられれば

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面白いのが山本さん、R65不動産を展開する一方で、15棟のシェアハウスも運営しているところ。

テーマは「利害関係のない友達」。僕が就職で東京に出たとき、土日仕事で平日は遅くまで働くので、友達が全然作れなかったんです。それで友達作ろうとイベントに行ったら宗教の勧誘や保険の営業で(笑)。結局辿り着いたのがシェアハウス。そこは大学の部室みたいなんです

ちなみに山本さんは起業して7年たつ今もシェアハウス暮らし。運営する15棟のシェアハウスを転々としているとか。そのノマドな生活は「めちゃくちゃ楽しい!」と言いますが、住んでて思うのは「めちゃくちゃ家賃が安いってわけじゃないんです。わざわざ人と住みたい人が集まってるんです」。これって新しい疑似家族=ふんわり家族の形態なのかもしれません。

さらにさらに、今はシェアハウスから新たな事業も発展中!

シェアハウスをやってると定期的に無職な人が出てくるんです(笑)。それでスナックを作って、そこで働いてもらったらいいじゃないかと思って。今は店長が曜日で替わるスナックをやってます。そしたら常連さんが7倍に増えて! 僕もカウンターに立ってますよ

ここか松陰神社の「スナックニューショーイン」……なんかゆるくて、自由で、めちゃめちゃ楽しそうですね。

次は本屋を作ろうと思ってて。これも「シェア本屋」というか。棚を貸して「そこはあなたの区画なので、そこで営業してください」と。スナックは楽しいんですけど、コロナでバッシングを受けて、しゃべらなくてもできることをやろうと思って。不要不急だけど本屋を通じて人とつながるって、ジブリ映画の『耳をすませば』みたいでいいなと思うんです

山本さんがクリエイトする新たなコミュニケーションスペース。それ、広島でさらに活性化するかもですよ。

いま広島に移住する話が出てて。どこかで空き家をたくさん買って、シェアハウス村みたいなのができても面白いし。地域の人たちから白い目で見られないように、ゆっくりやっていこうかなと思ってますね。ホント社会人になってから友達を作るのって大変なんです。そういうところができればと思ってボヤボヤやってます!

2022.3.28 on-line


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