【選んで無職日記96】おおきなあい
2024/10/20
起きるとリビングには犬もおらずもぬけの殻だったので、散歩にでも出かけたのかと思い一人コーヒーを飲みパンを食べた。父が録画しておいたアメトーーク(ほとんど私しか見ない)を見ながらぼうっとしていても誰も帰ってこない。母は朝早く仕事に出ている。
夫が実家に泊まっていたので、一時間半後に彼が寝室から出てくると、誰も居ないのと尋ねてきたので誰も居ないのと返した。水飲む?と聞くと外から「ワン」という声がしたので、帰って来たねと二人で笑う。
家を出る支度をするのだが、犬と別れるのが惜しいので何度も「うちに来るかい?」と聞いてみた。電車の中で吠えず大人しくしていたら一緒に行けるよ~と言ってもこもこを撫でまわす。
実家帰省中の四日間で、随分犬と目が合う機会が増えたなと感じた。私が彼女の毛に出来る毛玉を一生懸命に取っていると、顔を覗き込むようにしてじぃっと長いこと目を見てくることが何度もあって、とても愛しかった。
彼女は私の膝の上で寝て、同じベッドで寝て、どんな時も私のことを癒してくれ、私の中にある愛の感情をめいっぱい放出することができる不思議な存在だ。
家を出て母方の祖母を拾い、父方の祖父の家に寄ると、柿と鳩サブレとハッピーターンを沢山貰った。もうそんな時期か。祖父は随分はっきりとした紫色のフリースを着ていた。
その後母のカフェに寄り、昼食を取りながら店の手伝いをほんの少しした。高校終了ぐらいからカフェのホールの手伝いはしていたから、もはやこれが天職なのではないかと思うほどホールの仕事には慣れている。ありがたいことに日曜の陰鬱な天気の中沢山の人が来店してくれて、席が完全に埋まる時間もあった。
お皿を下げている時に、テーブル卓に呼び止められたので振り向くと、お姉さん二人がニコニコしてそのスニーカーどこのですかと尋ねてくる。カフェに関係のない質問はほとんどないので面食らってびっくりし、パンツをたくし上げてサロモンのスニーカーだったことを思い出し、それを伝えるとサロモン!と楽しそうに笑っていた。いや随分可愛いから聞いてみたくて!と言って笑っていて、とても嬉しそうだったので、今年のカラーリングであることと、購入した場所を伝えて去った。
自席に戻ってまた食事を始めた時に、ちいかわの「ほめられリボン」の回みたいだなと思って、それを夫に伝えると、その横にいた父が何の話?と聞いてきたので、律儀に夫が「ちいかわのほめられリボンという回があって」と話していて面白かった。
電車の時間が迫るので店を後にしようとキッチンに声をかけると、カウンターに常連さんがいたようで、母が私に紹介してくれた。
娘と夫ですと紹介されると、この作品を書いた方ですかと聞かれたので、そうですと恥ずかしがりながら返答すると、とても面白かったですと言ってくれる。
次はないんですかと質問され、恥ずかしさも相まってか「祖母が亡くなったので次はないですが、もしかしたら別の作品の次はあるかも」と訳の分からないことを口走ってしまい更に恥ずかしくなる。面と向かって読んだ人の感想を聞く機会がなかったから、とっても嬉しいしとっても恥ずかしい。こういう時に素直に聞くことが出来る力が私には必要だなと思う。
駅まで父に送ってもらい、二時半発の電車に乗り込んで家に戻る。もうここ数日は随分寒くて、地下を歩いていても風が冷たくて、服装を誤ったと感じる。
家に戻りしばらくしてから夫とショッピングモールに行き、ご飯を食べて買い物をして帰った。有田焼の素敵なお茶碗と湯呑を購入した。
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