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夢の中で会いましょう。

だんだん、だんだん、彼の夢を見なくなる。絶望の淵にいた時には、毎日彼の夢を見た。でも、そのどれもが悲しい夢だった。見たくない、そう思いながらそれでも彼の夢を見る日々。彼の夢を見る時は、決まって新しい彼女が彼の側にいる。新しい彼女の顔も名前も知らないのに。何故か当たり前のように彼の隣にいる。そして、彼はいつも新しい彼女の方を向いている。そんな悲しい夢。

でも10回に1回ぐらい、彼と私だけの夢を見る。その時、彼は笑って私を見ている。夢はただの夢。そんなこと分かっているのに、何だか夢の中の彼が、本当の彼のような気がして、嬉しくなったりする。

高校生の頃、夢に好きな人が出てくるのは、好きな人があなたのことを想っているからだ、って聞いた。その日から夢に好きな人が出てくると、こっちまで意識して、好きになったことがあったっけな。ほんとにそうだと、嬉しいな。彼と私が同じ気持ちだと、嬉しいな。

醒めたい夢と、醒めたくない夢を繰り返しながら、信じたくない現実の世界で生きている。不思議な感じ。

彼と会わなくなって、数ヶ月。夢の中でしか彼に会えない辛さにも、もうなれた。彼を思って涙を流すことも、もうなくなった。悲しいことに、私は少しずつ進んでいる。こんな辛い日々なのに、それでも進みたくないと思ってしまう。進むことで、全てが色褪せていくことが怖い。彼との思い出も、彼の声も、彼の笑顔も。時は残酷だ、とはこのことか。

彼の記憶が薄れゆく。少しずつ。少しずつ。これでいい。これでいい。と言い聞かせながら、明日も頑張ろう。

なんて思っていたのに、昨日の夜久しぶりに涙が溢れた。彼との幸せを選ばなかった自分を責めた。何度も伸ばしてくれていた彼の手を、私は握れなかった。そんな自分が悔しくて、情けなくて、涙が溢れた。彼がくれた指輪も、彼がくれたネックレスももうないのに、彼が指輪をくれたあの日のことは鮮明に覚えている。少しはにかみながら渡してくれた指輪の裏には、記念日と2人のイニシャルが刻まれていた。どんな気持ちでこの指輪を買ってくれたんだろう。そう思うだけでなんだか涙が出る。もらった時はそんなことまで考えなかったのに。今更そんなこと考えたって、意味なんかないのにね。

あーあ。もう泣かないって思っていたんだけどなぁ。やっぱり無理か。なんだか弱くなったな。悲しいな。会いたいな。夢で会えますように。どうか、その時は彼と私だけの世界でありますように。おやすみなさい。

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