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【読書録#01】『男の子になりたかった女の子になりたかった女の子』

読書録#01

『男の子になりたかった女の子になりたかった女の子』
著 松田青子


女性の生きづらさを風刺した12の作品集。

個人的に『ゼリーのエース』と『物語』の2作品が特に印象に残ったので、忘れないように記録しておく📝


▶︎『ゼリーのエース』
<あらすじ>
物語の主人公は、ゼリー作家の夫婦。ゼリーがうまく固まり、購入者の喜ぶ姿をみるのが夫婦の喜びである。しかし、ある日なかなか身を固めないゼリーが出来てしまう。夫婦は、なかなか身を固めないゼリーによって自分たちの評判に傷が付くのを恐れ、ゼリーを捨ててようとする。そんな夫婦のやり取りを聞いていたゼリーは出来損ないだからといって捨てようとする二人に腹を立て、文句を言う。ちょっと生意気なゼリーと会話するうちに、夫婦は身が固まらないという欠点があっても、ゼリーにはゼリーなりの良さがあることに気づくという物語。

<感想>
最初に読んだときはゼリーをただのゼリーというキャラクターとしか認識していなかったけれど、読み終えて、ふと表紙を見たときに帯の「いつまでも"身を固めない"娘の隠れた才能」という言葉から「いつまでも結婚せず実家にいる女性」を題材とした作品なんだと気がついた。
結婚しないことで肩身の狭い思いをしている女性をゼリーのかたまり具合に例えているのがなんとも面白いと思う。

"身を固めることが全てではない"

結婚という枠に囚われず、このゼリーのように太々しく生きたいものだと思う笑

▶︎『物語』
<あらすじ>
物語の語り手と登場人物たちの攻防を描いた物語。

<感想>
語り手は「男・女とはこうあるべき」という理想像の持ち主で、彼のガチガチに凝り固まった固定観念には読んでるこっちまでイライラしてくるくらい。登場人物たちも最初は語り手の指示に従うものの、次第に堪忍袋の緒が切れ、自分の感情を爆発させて自分達をコントロールしようとする語り手に「うるさいよ!」と対抗し、自分のありのままの姿を語り手に見せつける姿にスカッとする!!

(語り手が自分の思うように登場人物たちをコントロール出来ず、たじたじになる様も面白い。)

語り手の「こうあるべきだ」っていう押し付けは今の世の中にも通じるものばかりで、本当にうるさい!!
世論と個々人の間にある葛藤がコミカルに描かれていて、共感した。


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