ほのかおり

甘いものと、散歩が好きな、24歳の詩人です。

ほのかおり

甘いものと、散歩が好きな、24歳の詩人です。

最近の記事

梨木香歩さんの『裏庭』を読んで

それは異世界であり、死後の世界であり、エネルギーの集まる場所であり、現在と過去を結ぶ場所であり、人間の内面性を表した場所である。 裏庭での体験は、心に孤独を抱えた少女、照美が成長するためだけでなく、現実における彼女自身の家族の形を変えるきっかけとなった。 心の傷照美の旅は、彼女自身が自分でも気づかない、心の深いところで求めていたものかもしれない。 なぜなら、この旅によって、彼女の心の傷は癒え、弟の死や、家族と真正面から向き合えたからだ。 人は誰しも、心に傷を抱える生きも

    • 映画『西の魔女が死んだ』を観て

      子どものころの感覚を、まざまざと思い出させる瞬間が多くあった。 手紙を届けにやってきた郵便屋さんが、おばあちゃんの家でお酒を飲んでいたシーンは、どきりとした。 小学生くらいのころ、大人たちの会話についていけなかったときや、授業参観で、大人たちが笑うツボがよくわからなかったときの、疎外感を思い出したのだ。 大人になると、子供のことが気楽でうらやましくなる人もいるそうだ。 けれども、ちゃんと子ども時代を振りかえると、決して気楽ではなかっただろう。 子どもは、数多くある道から、

      • おばあちゃんに会いたい。

        96歳の曽祖母は、三重でひとり暮らしをしている。 食料や生活必需品の買い出し、掃除やお風呂の介助などのために、週に3回、ケアマネさんが家へ来てくださる。 相談や問題があった際に連絡をしてくださるケアマネさんから、突然、母のスマホに電話があった。 ひとり暮らしの曽祖母には、何かあった時に誰かがそばにおらず、すぐに駆けつけられる人がいない。 わたしは覚悟をした。その日がいつか来てしまうとわかっているから。 朝の7時半。朝食を食べていたわたしの手は震えていた。 同じく食事を

        • 妹へ。

          父が出張に行くと、両親のベッドは、母だけのベッドになる。小学生の妹はよく、自分の枕を持って、空いている母の隣へ眠りに行っていた。 妹は中学に入るくらいまで、家族の中で天使と呼ばれ、可愛がられていた。何かと神経質で手がかかると言われた私と比べ、妹は小さい頃からあまり手がかからず、母の癒しだった。 けれども、あまり学校生活や友達の話をしない子どもだった。 中学に入るとそれは顕著になり、私たち家族は、彼女にとって大きな出来事は聞くことがあっても、学校生活について詳しく知ることは

        梨木香歩さんの『裏庭』を読んで

          焼肉の帰りに。

          妹が大学に入学したので、家族でお祝いに焼肉を食べに行った、その帰り道のこと。 4月だというのに、風は骨に沁みるほど冷たく、耳が凍りそうに痛くて、一刻も早く家に帰りたかった。 けれども、お祝いの二次会を家でするために、コージーコーナーでケーキを買っていたので、走ることができない。 すり足で早歩きして、信号待ちの時はその場で小さく足踏みをし、ようやく家までの最後の曲がり角を曲がった。 両親は私の少し後ろで、妹は前で、体温を下げないように肩を上げながら急いでいる。 嘘みたいな

          焼肉の帰りに。