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アシモフの『われはロボット』を今さら読んで悔しがってるよ。

アイザック・アシモフの『われはロボット』を、今さらながら読んだ話をします。

実は私、高校時代(80年代)にSFマガジンを毎月買ってたんですよね。
なのに、今まで『われはロボット』を読んでいなかった……。
あほとしか思えんわ。

でも、当時の文系高校生としては、SFマガジンを読んで「海外SFは科学性を問う難しいもの」というメッセージを受け取ってしまったんですよ。
アーサー・C・クラークの『幼年期の終り』を読んでも、なんかよくわからなかったという……、そんな読解力のなさもありまして。

若い頃には、自分が読んでもよくわからない作品を、自分には縁のない分野と認識してしまうことって、まあありますよね。
年を取った今だからこそ、わかります。
あほやったんですわ。
背伸びしてでも、名作と評された作品は読んでおくべきでした。

『われはロボット』って、その後のあらゆるロボットものの原点というか、チャペックの『ロボット』は別として、この作品の影響を受けていない作品はないんじゃないかと、それは読んでみて思いました。

そんな後続の作品に影響を与え続けているのが、ロボット工学三原則です。

第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
       ――『ロボット工学ハンドブック』第五十六版、西暦2058年

アイザック・アシモフ著『われはロボット』

多分、アシモフを読んだことがない方でも、耳にしたことはあるのではないかと思います。私もそうでした。
それで最初、なんか嫌だなあと思ったんですね。
ロボットをあくまで目下に見てる感じとか、自分たちのための存在として疑わないあたりが、昭和の田舎に住む女子には、男尊女卑の差別そのものに感じられたんです。
いや、だって、「女子は給仕しなきゃいけないから、男の後から食べ始めて、先に食べ終わらなきゃいけない」と祖父からも言われてきた層ですから。食事を楽しむとか、そういうのはゼロ。給仕の合間に食事を済ませろ、それを家族から言われる10代。
ロボット=女に読めても、まあ不思議ではありませんでした。実際、女は二等市民みたいな感じが、サブカルにもありましたしね。

そんなもやもやもあり、50代のこの年まで、読まずに来ておりました。
なのに、家族が図書館で借りてきて、読まずに放置していたので、つい手に取ってしまったんですね。

『われはロボット』は、同じ世界観の連作短編集のかたちをとっており、スーザン・キャルヴィン、マイク・ドノヴァン、グレゴリイ・パウエルなど、同じキャラクターが多くのストーリーに登場します。
自立思考型ロボットと仕事をする人間たちが、あらゆるロボットのイレギュラーな行動(エラー)にどう対応するか、ロボットたちはどう考え、どう行動するのか、そういったことの9つのストーリーが、この本にはあります。
奇しくもナインストーリーズですが、書かれた物語の方向性としては、ロボット小説の基本的なパターンは全部この一冊に入っているかもしれないと思わせるものです。

だから、サブカル好きな人なら絶対読むべき一冊です。

で、前述した、ロボット三原則は差別の暗喩ではないか問題ですが。
作中で、三原則は世界の倫理大系の大多数の基本的指導原則とうたわれます。ロボットだけでなく、人間も守るべき原則だと。
他者に危害を加えない第一条や、自己保全の第三号はもちろん、服従的な第二条も仕事をする人間としては当然だということですね。

いやいや。
第二条の解釈としては、あまりに性善説的ではでは?
まあ、その文章が書かれたのは1946年頃なので、アメリカは絶好調だったかもしれないけど(白人男性的には)。

アシモフは移民の子なので、三原則の裏に移民と国家の関係もちょっと含まれてるかな、と誤読してしまう部分もあります。
アイザック少年が成長するうちに、アメリカへの移民が増えてきて、有能な人のみ歓迎的な移民政策に流れていったので。
キャンディストアを経営する父親の子という立場は、何を考えさせたのか。
これも、自伝を読んでないので、好き勝手言う前に自伝読めよなんですが、自伝の前に作品をもうちょっと読みたいですよねえ。なんで絶版にするんだよ、早川書房!

海外SF御三家とまで言われたアイザック・アシモフですら、絶版で、現在読める作品が制限されてしまっています。
読むなら今しかない!

いずれ『われはロボット』ですら絶版となって読めなくなる前に、まだ読んでない方で興味のある方は、ぜひ今のうちにどうぞ。

以上、自分がSFマガジン読んでるときに新刊の広告で見た作品がことごとく絶版化してて、うろたえているほんのよこみちがお伝えしました。
ありがとうございました。


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