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[本のおはなし vol.1] こんとあき

clubhouseを使って木曜日のお昼に30分、絵本や児童文学の「本のおはなし」をはじめました。こちらのnoteではおはなしに登場した本の紹介と、おまけのおはなしを少し。

第1回は「こんとあき」

ここからは今回の選書担当した松尾由佳のまとめです。

ー 4歳上の兄が生まれた頃からわたしが小学生になるまで、それこそ10年にもなるでしょうか、両親が「こどものとも」や「かがくのとも」といった福音館書店の月刊絵本を定期購読してくれていました。その中でも『筒井頼子 さく × 林明子 え』の絵本が大好きで何度も何度も読みました。特に「おいていかないで」は自分と兄の話だと信じてました。

『筒井頼子 × 林明子』の絵本は全6冊、今でも子どもたちに愛されている名作絵本! 昭和生まれなら出てくる風景はあの頃のリアルそのもの。登場人物たちも、それぞれしっかりと個性があるのに、どの子どもも「自分」に重なる不思議。

どれも思い入れがあるので、話しはじめたら止まらない…

今回は「こんとあき」
この本はなんと『え』だけでなく『さく』林明子。初版は1989年。
その頃にアニメ映画化された「魔女の宅急便(角野栄子 作)」の挿画が林明子さんだったことからわたしの中で林明子ブームが再燃(この頃になると作者の名前も覚えるように)。本屋で見かけた「こんとあき」も母に買ってもらった思い出の一冊です。

「キツネのぬいぐるみが動いて話す」「小さい子どもとぬいぐるみが旅に出る」なんてファンタジーなおはなしだけれど、本に出てくる風景はリアルそのもの。
『筒井頼子 × 林明子』作品でも見られた「現実そのままの世界」に、「ファンタジー」が交差してさらに大きく広がるこの世界こそ、子どもの「本当の世界」「本当のリアル」かもしれません。

ふたりで話したこの本のポイントは

「プリンがはいったお弁当がおいしそう!」「あきちゃんの『女子』要素がお花のヘアゴムくらい。ピッピのようにパワフルなわけでもないところも男女問わず自分に重ねやすいのかな」「電車・車掌さんの制服の色の組み合わせが最高」「最後がお風呂=身も心もあたたかい(こんが寝ちゃうところから始まるから、寝て・起きて・食べて・お風呂。日常。)」「こんがなぜ喋れるのかなど説明はなく、当たり前のように物語がはじまる」「あきちゃんの父母は存在を感じるけれども出てこない」「敵がいない。犬に連れていかれるけれども戦わない」「市井の人の描き方が、こんな人いるよね、というものだったりどこか懐かしい、親近感を覚える風景」「林明子さんのおばあちゃんが鳥取に住んでたらしい」「しっぽ!」「全編通してあたたかい!」

他にもわたしたちがこの絵本が好きなポイントはたくさんあって。

「こんがなかなか戻ってこない時のあきの表情!」「こんに表情はないのにとても生き生きと見える」「電車の揺れと出発したワクワク感をこんなに表現できる!?」「あきちゃんの鞄の中身が気になる。冒険に出る子ども=大抵リュックサックなのに、なぜそんな手提げ鞄なの?」「表紙の駅は御茶ノ水駅??」などなど

ちなみに我が息子(Q太郎・現在1歳後半)、0歳の祖父母からのクリスマスプレゼントは「こんのぬいぐるみ」。毎日「こんこん!」と抱きしめ、寝るときはいつも一緒。まだ絵本は早いよな〜と思いきや、本棚で見つけて「こんこん!?」と大興奮。大好きな電車も出てくるからか、「読んで〜」と持ってくるお気に入り絵本のひとつになりました。

わたしが「こんとあき」に出会った時は、すでに「魔女の宅急便」はじめファンタジーのお話もたくさん読んでいて、現実とおはなしは違うことも理解している年齢でした。0歳から「こん」と同じ姿のぬいぐるみと生活し、お話を聞いている息子にはこの世界はどう見えているのか、いつか聞いてみたいなぁ。

こんから「キツネ」の話へ。

「キツネ」って日本では神聖なものだったり、日本でも海外でもズル賢いイメージで語られがち。狸と狐は「化ける」とされてるし。賢い神様としての狐をイメージしてこんは生まれたのかはわかりませんが、愛らしい「ぬいぐるみ」になってあきの「お守り役」になっていることで、絵本におけるキツネのイメージは良い方向へ変わったかも?どうでしょうか?

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「本のおはなし」では最後に「今日の子守唄」も。
ここからは選曲・歌い手の扇谷一穂のおはなし。

ー 『こんとあき』についてお話した後には、どんな歌が良いだろう。
悩んだ末に、キツネの歌と言えば。の、この一曲を選びました。
ちょっとそのまますぎるけれど。

日本でも文部省唱歌として古くから親しまれている曲ですが、もともとは、ドイツの古い民謡。『Fuchs, du hast die Gans gestohlen (キツネよ、お前はガチョウを盗んだね)』

原曲の歌詞の内容を調べてみてびっくり。「ガチョウを返さなければ猟銃で撃つぞ!」という大分過激な内容なのです。かわいいキツネは撃ちたくない。でも。という葛藤も歌われてはいるのですが、日本で親しまれている内容とは大分隔たりがありますね。

日本語版の歌詞はお馴染みの「こぎつね こんこん〜」ですが、2番3番の歌詞はちょっと淋しい雰囲気も。かわいいけれど、飼いならせない。そんなきつねへのちょっと屈折した思い、のようなものも感じます。

『こぎつね』
作詞:勝承夫 作曲:ドイツ民謡

こぎつねコンコン
やまのなか やまのなか
くさのみつぶして おけしょうしたり
もみじのかんざし つげのくし

こぎつねコンコン
ふゆのやま ふゆのやま
かれはのきものじゃ ぬうにもぬえず
きれいなもようの はなもなし

こぎつねコンコン あなのなか あなのなか
おおきなしっぽは じゃまにはなるし
こくびを かしげて かんがえる

さて、次回は扇谷一穂さん選書『モーモーまきばのおきゃくさま』お楽しみに〜

「本のおはなし」は毎週木曜日のお昼に。どうぞ遊びにいらしてください。


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