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色づく奈良(写真家・佐藤和斗さん)


黄葉もみちする時になるらし
月人つきひとかつらの枝の色づく見れば*

万葉集の歌のひとつです。秋の月の光がいっそう冴え冴えと輝きを増すのは、燦々たる黄葉の照り返しのせいでもあるのでしょうか。
今年もまた同じ季節がめぐりきたいにしえの都の風景は千年前と変わるのか、変わらないのか……。
奈良に生まれ育った写真家・佐藤和斗さんの作品をとくとお楽しみください。(ひととき 2022年11月号より)

*万葉集 第10巻 2202番。月人は月の擬人化、また中国にはかつて月に桂が生えているという伝説があったという

曽爾そに高原

2017/11/19/16:22撮影

「奈良でススキといえばこの場所。三重県との県境近くの曽爾高原です。秋の落ち着いた雰囲気を感じられる場所です。夕日に照らされる16時半頃をねらって、倶留尊くろそやまの麓にある遊歩道を登り、階段状になっている所から山を背に撮影しました」

若草山

2017/11/6/17:05撮影

「奈良公園と春日山原始林との間に位置する3つ重ねの山が、標高342メートルの若草山です。その2つ目の斜面には僕のお気に入りの光景が広がっています。東側に連なる春日山原始林に暮らすシカほどではありませんし、奈良公園のシカも行き来しているのですべてではありませんが、人との距離を保ち、立派な角を持つオスジカに出会えたりと、ここでは野生を感じられます」

奈良公園 大銀杏の下

2016/11/20/11:15撮影

「大仏殿のそばの大銀杏の下です。良い具合に枝葉が残り、地面いっぱいにイチョウの絨毯が広がる光景は、例年11月20日くらいが見頃です。これまで撮影してきた中で一番心が和んだ光景でした」

奈良公園 浮見堂

2021/11/18/8:06撮影

「奈良公園の鷺池に浮かぶお堂です。朝は逆光になるので空が白っぽくなります。そこで余白を埋めるようにモミジの隙間から撮影しました。紅葉は真っ赤に染まった姿がもっとも美しいのかもしれませんが、黄と緑が混じるグラデーションも僕は好きなんです」

※奈良公園ではシカとの触れ合いについて以下のお願いをしています ●野生動物につき人を攻撃することもあるのでご注意ください ●鹿せんべい以外の食べ物を与えないでください。シカが病気になる恐れがあります ●ゴミを捨てないでください。食べたシカが死んだ例もあります ●叩いたり、追いかけたり、シカにいたずらをしないでください

写真・解説=佐藤和斗

佐藤和斗(さとう・かずと)
自然写真家。1984年、奈良市生まれ。中野晴生氏に師事、2008年に独立。写真教室を開催しながら、奈良公園、若草山、春日山の自然をはじめ、生きとし生けるものすべてをテーマに撮影を続けている。写真集に『Dear deer 鹿たちの楽園』『DEER LAND 誰も知らない鹿の国』『DEER PARK 世界でここにしかない奇跡の場所』がある。11月には新刊『明日、シカに会いに行こう〜奈良公園で見つけた幸せのかたち〜』(すべて青菁社)を上梓予定。

◇◆◇ 佐藤和斗さんの新刊 ◇◆◇

明日、シカに会いに行こう~奈良公園で見つけた幸せのかたち~
佐藤和斗 著(青菁社)

出典:ひととき2022年11月号


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