山中や菊はたをらぬ湯の匂|芭蕉の風景
山中や菊はたをらぬ湯の匂 芭蕉行脚のたのしび爰にあり 元禄二(1689)年、『おくのほそ道』の旅の途次、芭蕉は小松から山中へと入る。ここは行基発見とされる歴史ある温泉。芭蕉も「その効有馬に次ぐといふ」と讃える。意味は「温泉の効能は有馬に続くということだ」。曾良と金沢の俳人、北枝が同行していた。旧暦七月二十七日午後四時半、到着。発つのは八月五日昼。滞在は九日に及ぶ。ゆっくり旅の疲れを癒したが、湯に浸かっていただけではない。この地での芭蕉からの聞き書きを北枝は『山中問答』(嘉永三