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118 カレーとハヤシ

『源氏物語 A・ウェイリー版』(紫式部著、アーサー・ウェイリー訳、毬矢まりえ訳、森山恵訳)を読んでいる

 ほぼ毎日、『源氏物語 A・ウェイリー版』(紫式部著、アーサー・ウェイリー訳、毬矢まりえ訳、森山恵訳)を読んでいる。ちょっとずつ。光源氏は冒頭で12歳、今日読んでいた「夕顔」で17歳。52歳まで描かれるはずなので、まだまだ冒頭に過ぎない。それでも、けっこう当てられるというか、いわば他人の恋愛遍歴を読んでいるわけなので、驚きと同時に呆れもする。だいたい、目当ての女性じゃない人とも関係してしまう。女性だけではない。ちょっとカワイイと思える男子ともだ。これ、普通に描くとけっこうヤバイ感じになってしまう(少なくとも未成年の扱いとしてどうか、と)。
 ま、そんなことはどうでもよくて、古典中の古典、日本文学の源泉でもあるのだから。そして歌(和歌)である。つまりこれはミュージカルなのだ。
 原作があってミュージカルにする、というのならわかるが、そもそも原作がミュージカルって凄すぎる。歌の概念がいまとは違うのだろうけど。
 いろいろと驚かされる毎日ではある。
 どうしてこれほどスラスラ読めてしまうのかと言えば、それは恐らく「翻訳」のおかげだろう。古文→英訳→現代日本語訳と、一般的な本に比べると圧倒的に多数の目と手と知恵を経ているので、確かに原文にあたるべきかもしれないがそんな高いハードルは越えられないので、いわばお粥のようになったこのバージョンを飲み干しているわけだ。
 飲み干すといえば、「カレーは飲み物」という店がある。カレーは飲めるとなると、ハヤシはどうか? ハヤシは飲めるか?

久しぶりのハヤシライス

 我が家でハヤシライスを食べるのは初めてかもしれない。なにしろ、妻はカレーが嫌いで、ハヤシも同類でダメである。私のような肉好きにはたまらない香りや味や脂っぽさがダメなのである。それでも、果敢にカレーは作ってくれる。少しは食べられるようになり、主にカレー南蛮で食べている。
 しかし、ハヤシを作る発想は我が家にはそもそも欠けていた。私自身、ハヤシライスよりはカレーライス派である。まったく別物なのに、なぜかハヤシとカレーは比較されやすい。
 外食でハヤシライスを食べたのが最後で、それは2019年のことだった。上野駅構内にレカンがあるのだが、その横にレカンの経営していたブラッスリーがあって、そこで昼食にハヤシライスを出していたことがあったのだ。珍しいので食べてみた。それきりである。
 恐らくその前となると、日本橋丸善の上で食べたぐらいだろう。元祖のハヤシライスである。
 もっとも、オムライスにハヤシのルーをかけたオムハヤシも食べたかもしれないけれど、それはもうオムライスなので。
 妻に言わせると「玉ねぎと牛肉を用意したら、ハヤシのルーがあると簡単だ」とか。このハヤシのルーは、母親が「もう作らないから」とくれたものであった。
 じゃあ、母親のハヤシはよく食べたのだろうか?
 それはあまり記憶にない。間違いなく食べていたのであるが、大好物ということでもなかったと思う。母親は神戸の人なので、肉と言えば牛肉であり、牛肉をおいしく食べるためのハヤシだったと思う。それは、ハッシュドビーフである。ハッシュドビーフとハヤシライスの違いは、私にはわからない。
 だけど、カレーと違い、ハヤシにはカタチのある牛肉は必須である。つまり飲めない。それでも、あっという間に平らげてしまえるから、かなり飲み物に近い。カレーだって具しだいでぜんぜん飲めない。スープカレーと呼ばれているものも、具がごろごろなので、飲むのは難しいだろう。
 ちなみに私はスープカレーは好きじゃない。嫌いとまではいかないが、好んで食べたいとは思わない。

カレーかハヤシか

学食の味

 給食経験としては、私はご飯ものが出ない時代だったので、カレーは出たことがなく、カレー風味のスープしか出なかった。高校には学食があって、それが実にありがたく、学食といえばカレーであった。ハヤシの記憶はないので、たぶんメニューにはなかっただろう。
 大学時代もカレーはよく食べた。いまほど隆盛ではなかったものの、喫茶店で食べることもできた。大学時代の喫茶店では、サラスパ(パスタサラダ)かカレーであった。神保町界隈の店にもたまに行った。社会人になると、積極的にカレーを食べに行った記憶はない。ただ、蕎麦屋で蕎麦とカレーの組み合わせは「あり」だった。そこで食べるカレーは、学食の記憶に近いものがあったはずで、いまも恐らく富士そばとかで食べれば、その味じゃないかと推測できる。
 いずれにせよ、カレーは、流し込むようにサクサクと食べられる点で、これからも特別に意識することなく、自然に食べているに違いない。だが、ハヤシはかなり意識しないと食べないだろう。
 カレーが食べたくなる日があるとしても、ハヤシが食べたくなる日が来るのかどうかは、いまのところわからないけど。
 




 

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