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111 『源氏物語 A・ウェイリー版』(紫式部著、アーサー・ウェイリー訳、毬矢まりえ訳、森山恵訳)を読み始めた

ドラマは見続けるかわからないけど

 大河ドラマ『光る君へ』を初回のみ見た。見続けるかどうかはいまはわからない。とりあえず2話も見るつもりではいる。
 それよりも、『源氏物語』って読んでないな。読んだ記憶がない。『平家物語』は読んだんだけど(関係ないですね)。
 たとえば、「光源氏」って、名前として変ですよね。源氏は氏なのに。これでは、太郎桃、みたいな感じじゃないですか? あ、違いますね。太郎と桃を切り離すのはダメだけど。頼朝源、みたいなことですよね。
 しかし、どうも違うらしい。このドラマのタイトルのままに、「源氏の中でめちゃ光ってるから」。通称として「光源氏」とされている。
 あと、「壺」ですよね。壺ってなに?

壺と蓬莱山

壺についての考察

 壺(つぼ)と甕(かめ)の違いは? 調べると、ひとりで運べるのが壺。ひとりではムリなのが甕らしいけど、曖昧らしい。また、壺は細くすぼまった首のあるタイプもあるが、甕にはない。
『源氏物語』と、最初に「これは源氏の話だからね」と断っているのだが、実は原本にはタイトルはなくて、各章のタイトルしかなかったとのこと。つまりこれもまた通称なんだね。
 その最初の章のタイトルが「桐壺」。壺である。
 どうやら、帝の名が桐壺。壺は中庭。壺みたいだから? さらに藤壺も登場する。「壺、好きだな」と思う。私の世代で「壺」といえば、信仰宗教に買わされる壺である(霊感商法)。もちろん「源氏物語」とは無関係だ。
 いずれにせよ、のっけから謎が多すぎて、とてもストーリーを楽しむところまでは行かない。したがって、原文(現代文に近づけているとはいえ)で読むのは、最初からギブアップ。
 たくさんの日本人作家によって、源氏物語は現代語訳になっているので、その中から選べばいいだろう、と探していて、『源氏物語 A・ウェイリー版』(紫式部著、アーサー・ウェイリー訳、毬矢まりえ訳、森山恵訳)を見つけた。
「え? わざわざ英語に訳された『源氏物語』をまた日本語に戻しているわけ?」
 すごい情熱がないとやり遂げるのは難しいかもしれない。村上春樹の小説を英語版で読み、感銘を受けたからとそこから日本語に訳す人はそうそういないだろう。
 なぜなら、私たちは「翻訳されたものは、原本とは違う」と認識しているからだ。どこか、必ず違ってしまうはずで、そのいわば「エラー」がさらに日本語に訳したら拡大してしまうんじゃないか?
 冷凍された食品を、解凍したあとに、再冷凍するのは危険な行為だから、それと同じようなこと?(違うけど)。

ワードロープのレディ

 のっけから、「ワードロープのレディ」。更衣のこと。さらに「レッドチェンバーのレディ」(女御)。「エンペラーのご寵愛を一身に集める女」といった表現。「顧問官」に「ダイナゴン」のフリガナ。「弘徽殿」には「コキデン」のフリガナがあって、以後、カタカナの「コキデン」として登場する。コキデン。ゴキゲンではないけど、なんだかこれは……。
 おもしろい。
 いや、まあ、一周回っておもしろい。喩えが古くさいかもしれないが、カリフォルニアロールみたいな感じがする。日本の海苔巻きが米国において、とんでもない発展を遂げ、それが逆輸入されてくる。
 あるいは最近なら、成人式用の派手な衣装がニューヨークのファッションショーに登場したニュースみたいな、奇妙な香ばしさ。落語の「酢豆腐」ではないが、まあ、なんともいえぬおもしろさだ。
 少なくとも、すいすい読めてしまう。私にとっては、ラノベを読むよりも楽である。わかりやすい注も便利だ。
 読めなかったものが読めることは、うれしい。さらに、ウィリーは「源氏物語」を「歌物語」ととらえ、作中の和歌を英訳している。それを訳すと同時に、藤井貞和監修による原文表記もついてくる。お得感がある。
 しばらく、これを楽しむことにしよう。
 
 


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