私がmiwaを嫌いになった理由

高校時代。
今のマッチングアプリの先駆けというか、入学することが決まってからの期間、ミクシイやモバゲー、グリーなどで新入生どうしが交流を深め、学校が始まっても即友達がいる、というような人間が多かった。誰も一人になりたくなかったのだと思うし、かくいう私もグリーに登録して超無難なやりとりをしていた。学校始まったらあそぼーねーなど約束は殆ど叶うことは無い。一人だけ、プリクラを撮りに行ったリサちゃんがいたが、話を聞いていたらその時付き合っていた男の元カノだという。しかも件のサイト内で付き合って入学したとたんに別れたという。入学当初はさぞ誇らしかったろう。

高校に入って初めての彼氏は4年続いた。マッチングアプリもどきでつながっていたものの、クラスに入るまでよく知らなかったYくんは、背はさほど高くないがクラスの盛り上げキャラで、みんながやっていないことをやりたいというようなタレント志望だった。なぜ私が彼に気に入られたのか定かではないのだが、初めの頃の保健授業で、先生が自分のご病気の話をされていた。バセドウ病の手術の仕方を細かに伝えてくださっていたのだが、先生の手先を見ているうちに脳内で自分の首になぞらえて、想像をした。途端、ガタンという大きな音がしたと同時に私は床の木目を見ていた。想像をしすぎて、椅子に座ったままぶっ倒れたのだ。貧血になる人間を目の前で見ることがなかった(そりゃそうだろう)生徒たちは騒然、先生は慌てて保健室から担架をもってきてくれた。あまりみんなと仲良くなっていない状況で、担架に乗って顔を真っ青にした私はクラスの中心の的になってしまった。ふと、当時モテていたK君がぽろっと「(私の名前)さんって、かわいいよな」と呟いたそうで、なぜかその時期に少し好意を寄せられることが多かった。か弱いお姫様にでも見えたんだろうか、ぶっ倒れる側はそれどころでないので複雑だ。K君にぞっこんだったクラスのリーダーに目を着けられてしまうし、K君は私の迷惑も顧みず、B’zのCDを3枚貸してくれた。どうだった?と無垢な目で聞かれたからとりあえず「ラブファントム」って答えた。


Y君はクラスの中心人物だったので、好きな子の話も周りで固めていたらしい。なんとなく、自分に好意があるらしいことを空気でも、女子のザルな秘密話でも聞いていた。断りづらいし、ものすごく外見が嫌というわけではない。むしろかわいい顔をしいていて私が男だったら彼に突っ込みたくなるような受けタイプだった。ある日から、まあいいかと付き合うようになる。

しかし、付き合ってみて知ったことだが音楽の好みが全く合わなかった。私の好みは洋楽や歌謡曲(松田聖子、斉藤由貴)~少し前のヒットソング(aikoやクリスタルケイ、アンジェラアキ)、もしくは当時熱狂的にライブに通ってセーラー服に着替えて旗を振っていた、トラウマテクノポップバンド、アーバンギャルドほか、カヒミカリィやYMCKなどの音楽だったのに対し、彼は全盛期だったといえようAKB48、ファンキーモンキーベイビーズ、忘れたがチャラい音楽
そしてmiwaだった。ライブに足を運んでは彼女がいかに可愛いかを力説された。


そこまではまあ目をつぶれたのだが、問題は私に彼女らのような偶像的処女性を求めてきたところだった。
男子の連絡先は全消去、クラスの男子にも私と親密にならないように話し、クラスの女子と下ネタで盛り上がってるときは冷たい目で一瞥され、帰り道にわざと落ち込んだ様子で、下品な話はしないでほしいと打ち明けられた。にもかかわらず自分はサッカーをしながら決して立派とは言えないちんこを出したり、大声でおっぱいと叫び出すような輩だった。(今思えばめちゃくちゃきらい)

不平等さに嫌悪を覚えながら、なんとなく4年間付き合って、彼は浪人生の間に新しい彼女ができたからと振られた。死ねと思った。

とはいえ初体験の相手であったから、私は私なりに少しでも彼の趣味に合わせようと、彼の好きな本やお笑い番組、そしてmiwaを頑張って知ろうとした。
キレイでかわいいのにあの声が無理だった。女に嫌われる女のタイプだと思う。ひゃんひゃん高い声で歌う彼女を見ながら、お前のせいで私は男に髪型をケチ着けられるし、抱いた幻想の体現化を迫られてんだぞと呪った。ごめんmiwa

そんな中1曲だけ、良いなと思える曲があった。
「僕が僕であるために」
尾崎豊のカバー曲だった。そこで尾崎を知った私は彼の見た目にも音楽にも生き様にも惚れて、弟と一緒にギターでカバーなどして傾倒していった。

なので、尾崎という素晴らしいアーティストを知る入口をくれたYくん、miwaにはここで感謝を述べたいと思う。

付き合う相手のことはよくよく知ってから、その場に流されぬように決断しなければならないと知った、16歳~19歳であった。

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