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「陰」に惹かれる心とは?@デンマーク

心地よい空間があちこちにあるデンマーク。その秘訣はお茶とケーキ、一度座ると「動きたくない」と思ってしまう座り心地の良いソファー、キャンドルなど様々あると思います。その中でも私が最初に気になったのはあかりでした。

学校の寮には個室と共有スペースがあります。そこで勉強したりお喋りしたりしていると、あるデンマーク人男性が通りかかり全体の照明を消して去って行きました、「明るすぎる」という言葉を残して…。

そうなるとテーブルの真上にある間接照明だけになり、私たちの周りは一気に暗くなりました。日本のお母さんなら「こんなところで勉強したら目が悪くなる」と言いそうな暗さに。

私が寝起きする部屋も実は間接照明しかないせいで暗く、手元ライトを何度も調整してなんとか勉強をしていました。しかし無理に明るくしようとしなればその暗さというか、ほの明るい感じが落ち着くのに気づきました。勉強は明るい食堂でするようになりました。

もしかして夜は無理に明るくしないほうがいいかもしれないです。というのもこの学校にいるデンマーク人は早く寝る人が多かったのですが、もしも寝る直前まで煌々と電気をつけていると、なかなか寝付けないかもしれません。その点、部屋が暗いと入眠には適していそうです。

電気を消した男性にその理由を聞いても「こっちの方がいいから」という答えで感覚的なものみたいでした。そこで日本の照明の専門家にお聞きしたところ、「目の色が違うので明るさの感じ方も違うのでは?」ということでした。光の強さは快不快に直結するらしいです。デンマーク人の目の色はブルーとか、薄い灰色とか薄い茶色とかなので、少し明るすぎるだけでも不快に感じるのかもしれません。

夜に煌々とと電気をつけがちな日本でも、電気が普及する前は暗さや陰を大切にする文化がありました。例えば「夜目遠目笠の内(よめ とおめ かさのうち)」という言葉があり、主に女性に対して使われます。夜の暗さ、遠さ、傘の下で隠れている時などは、はっきり見えないことにより実際よりずっと美しいとイメージしてしまうという言葉。私なども年齢を重ねてきたので、強い日光や明るい照明をわざと避けたい気持ちになります(笑)

帰国直後にちょうどテレビを見ていると、谷崎潤一郎の随筆「陰翳礼讃」に関する番組が放映されていました。
西洋の文化では明るくすることで「陰影を消す」ことに重きをおくのに対比して、日本では「陰影を認め」それを利用することで陰影で映える芸術を作り上げたというお話。和蝋燭の下で見る金屏風や漆器の蒔絵の美しさ。暗いことが前提でそれを最大限に生かした芸術が日本にはあり、その芸術性は広く世界で認められているとのこと。

デンマークにおける居心地の良い空間、谷崎が書いた昔の日本の室内はどちらも暗さを最大限に生かしている。両国には「陰」を生かそうという点で共通性があるようです。

そういえば2年前の夏にコペンハーゲンのデザインミュージアムを訪れた時のことを思い出しました。ある時期、デンマークのデザインが日本の浮世絵からインスピレーションを得たことを示す展示がありました。過去に日本文化から影響を受けたデンマークと北欧のデザインが大好きな現代日本人。お互いに惹かれ合う両国には、「陰」以外にも通じ合う価値観があるのかもしれません。

#デンマーク #あかり #間接照明 #Hygge #陰影礼賛 #デザイン #浮世絵 #谷崎潤一郎

1. そんな!いいんですか!? 嬉しいです!! フォルケホイスコーレ作りのための勉強に使わせていただきます♪