田舎で整理収納アドバイザーを生業とする難しさ

年末に向けて「お片付け」の依頼がぐぐっと増えてきました。年越しまでにきれいにしたい方や、衣替えの際にモノの多さに驚いた方など様々いらっしゃるようですが、片付けに着手してくださるのはとても嬉しいことです。

片付けを促すのに有効な言葉として「使いもしないモノを保管するのに〇〇円もの家賃を払っているんですよ」という…なんてことを聞いたことがあるのではないでしょうか。
居住スペースの限られている都心部では、この言葉をきっかけに「本当に必要なもの」だけに囲まれて生活するようになる人も多いのだとか。

ですが、当方が住まうのは人口10万人以下の小さな田舎町。
田舎で整理収納アドバイザーをやる上で難しいさを感じるのは、皆さん一様に「先祖代々の土地が有り余っていて、保管する場所には困っていない(だから無限にモノを増やせる)」ということ。

■床下を改造し始めた私の実父の例

ちなみに私の実父の例を挙げてみます。
今年、私の実家では弟がめでたく結婚することになり、お嫁さんを迎えるために一念発起して大々的な生前整理を行いました。(拙note「オタクの生前整理」参照)
勢いよく黒歴史を捨てていく我々姉弟に、「このままでは自分のものまで勝手に捨てられてしまう…!」と危機感を抱いた実父。まさかの行動に出ました。

床下に部屋を作ってそこに自分の荷物を移動する。絶対に触るなよ!」

我々姉弟は唖然です。
まず「床下に部屋を作る」の意味不明さ。
確かに我が家は床下にちょっとしたスペースがあるのですが、それでもせいぜい100㎝もない程度。そんなところに部屋を作ったところで、高さは知れたものです。湿気も酷いでしょうし、立って歩けないような部屋を作っても不便極まりない。というか、そんな工事費を捻出する意味が分かりません
そんな微々たるスペースに何を収納したいのかと聞けば、「捨てるに忍びないものをそちらに移動する」とのこと。そんなものがあるなら今のうちに処分すればいいだけなのに。

どうしても『捨てる』という判断はしたくない、だから床下に隠す、という論法。

ましてや後期高齢者の実父、そんなところにモノを移動するだけでどれほどの体力を使うか分かったものではありません。その体力があるうちに、終末を見据えて生前整理に取り掛かればいいのですが、やっぱりそれはしたくないのでしょう。
いやもう、ぶっちゃけ言うと「そんなお金があるなら、後を継ぐ弟夫婦に少しでも残してやってくれんかのぅ…(´・ω・`)」というのが本音。

それはもう、身内は絶対に言ってはいけないセリフですのでね。
ぐっと飲みこんで、万が一の事態になったら腹を据えて片付けようと決意しましたが。
「本職としてアドバイザーをしているのに情けない!」と思われるかもしれませんが、同じ地域でも都心部に住むお若い方なら簡単に納得してくださることが、山奥に住む70~80代にはなかなか通用しないのです。それくらい、田舎の「土地」というのは魔物です。

とにかく私にできるのは、父が満足いくまで床下にモノを詰め込むお手伝いをすること。
この年代は、説得されることもよしとしません。なので、「一緒に手伝う」ことで安心感を与える方がよいようですね。
その際には、さりげなくモノの重要度を聞いておき、父の死後につつがなく処分を出来るように、下準備だけしておくことです。これなら角が立たないし、父も安心してくれます。もしかしたら手伝っているうちに「やっぱりこれは要らないなぁ」とか言い出してくれれば儲けもの。

お客様がご高齢の場合、説得は諦め、どこにどのようなものがあるかの話を親身に聞いてあげて、そのリストをさりげなく作っておいてあげることが(一見すると遠回りのように見えますが)最短ルートです。
リスト作りさえしておけば、あとは他の家族や業者さんに一任することだってできますのでね。
重ね重ね「無駄だからやめなさい」とか「そんなもの取っておいてどうするの」「私たちの迷惑を考えて」などとは言わないように。
私も、もう父は残り少ない人生ですので、好きにさせてあげようと思います(内心は穏やかではありませんがw)。

この「親身に話を聞いてあげる」というのは実はとても重要で、お若い方でも通用するメソッドです。もし身内の片付けなどに困っている方がいたら、床に落ちているものを拾って「これはどういうものなの?」とモノにまつわる思い出話を聞いてあげてみて下さい。それだけで勝手に浄化されて手放す、というケースも多いです。

■別荘を建ててしまったお客様の件

実父の場合はいざ知らず、いま関わっているお客様のケースは、そのさらに上をいくものでした。
なんと、4LDKの自宅が満杯になったので、新たに2LDKの別の家に「必要なものだけ持って」移り住むことにしたとのこと。ちなみに4LDKのご自宅はそのまま放置です。
にもかかわらず新しい2LDKが満杯になり、私が呼ばれました。いざ片付けるのかと思いきや、「新しく別荘を建てるので、そこの収納の相談に乗ってほしい」と。もちろん実父と一緒で「荷物は一切捨てる気はない」とのこと。

実父もお客様も同年代で、「捨てる」ということへの拒否感がすごいんですね。そして我が実家より田舎にあるこちらのお客様、土地だけは潤沢にあるもので、どうしようもないのだろうと諦めモードです。しかも建てた別荘以外にも別の遊び方ができる場所が欲しいともう一軒建てるご予定なんだとか。実父より10歳年上ですけどね。

タイプは違うのですが、このお客様もかなりの収集癖のある方。
集め出したらキリがないタイプの方で、書籍や書類がとても多いんですね。
さらに、外でのご趣味も多く、とてもじゃないけど家の片付けまで手が回らないのに、持ちこむ本と書類と趣味の道具が膨大過ぎて、毎回相当な数のゴミ袋を出しているにもかかわらず、なかなかモノが減りません。
なにしろこのお客様、新聞だけで3種類も取ってるんですよねぇ。朝刊と夕刊合わせると毎日6紙も届くことになるわけで、そりゃぁ片付けも追いつきません。

この世代を拝見していますと、「要・不要」の判断するのがきつくて処分ができない、というのが如実にわかります。その証拠に毎度、「ただのゴミ」が大量に発掘されるんです。あまりにモノが多すぎて、「ゴミをゴミ箱に捨てる」という基本動作さえできなくなっていらっしゃる。だから余計に散らかるんですが、恐らくそれを認識できていない。

しかも田舎に住んでると土地だけは困らないから、なかなかモノを手放さない人が多いんですよね…!

■田舎の片付けは「一歩引く」のが肝心かと

田舎で片づけをする場合やアドバイザーとして仕事を始める場合、
(1)お客様の気の済むまでやらせる
(2)どこに何があるのかのリストを私が作製してあげる
(3)どんな価値があるモノが、どこに配置されているかを、私から残るご家族にお伝えしておく

…という方法も、時として必要になります。
年末に向けて、片付けに苦しんでいる方々の、何かの参考になれば幸いです。




もしサポートのご意思があるなら、お気持ちだけで。別の困っている方へ直接ご寄付ください。私と私の家族は元気なのでnote経由のサポートの必要はありません(*'ω'*)