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002. 悔しいけれど、愛されてた。


姪っ子たちが遊びに来ている。
もうすぐ7歳と4歳のふたりは、どこか小さな頃のわたしに似ている。
嬉しいような恥ずかしいような。とにかくとても愛おしい存在だ。

「あのね、なーりーが帰ってくるまであと3日、あと2日、あと1日…って数えて待ってたんだよ」

「あのね、なーり、お隣に座って!」

「あのね、なーり、お部屋でひとりでお仕事なの?じゃあ寂しくないようにくまさん貸してあげるね」

「あのね、なーり、あのね、なーり」

彼女たちの眼差しは本当に無垢で
ただ愛しているということをわたしに伝えてくれる。

全力で遊ぶし、全力で不満を述べるし、全力で笑う。かわいい。愛おしい。

わたし自身には5つ上に兄、2つ上に姉がいる。
適度に歳が離れていたおかげか、兄との関係性は良好だったが
姉とのそれは特別良いものではなかった。

良いものではなかった。と、思っていた。

幼い頃、わたしの姉は小児喘息を患っていた。
必然的に両親の意識は姉に集まり
一人遊びが得意なわたしは、姉と比べて手のかからない子どもだったらしい。

そんなことは何度も聞いていたし、その話を聞くたびに
「手のかからない聞き分けの良い子にならざるを得なかったんじゃないか」
と理不尽な思いを抱かずにはいられなかった。

と、思っていた。のだけれど。

去年よりもいろんなことがたくさんできるようになった姪っ子たちは
今年は特に、姉妹同士でよくおままごとをしている。

下の妹の方は特にひょうきんで、曲目を自分で挙げて兄のスマホから流させては
お尻を振りながらわたしたちにダンスを披露してくれる。

そのダンスを見て大人たちは手を叩いて喜ぶ。

「すごいね!かわいい!じょうず!じょうず!」

その間
ダンスがあまり得意でない姉の方はちょっといじらしそうに妹を見つめる。

「危ないよ、転んじゃうよ」
「ん?いいよ、先に好きな歌踊っていいよ」
「えー。わかったよ。一緒に踊ってあげるよ」

お姉ちゃんはしっかりお姉ちゃんなのだ。

そんなケアに全く気が付かない様子の妹ちゃん。相変わらずノリノリでお尻を振っている。

彼女たちの様子を見ていると何故だか急に

(あ、これはたぶん、幼い頃のわたしなんだろうな)

と思わずにはいられなかった。

たぶん、姉は。きっとね。

今の彼女のように、妹であるわたしをすごく見ていてくれてたんだと思う。
お姉ちゃんだからって、順番を譲ってくれたり、なにかを我慢してくれたり。

姉は本当に自分勝手で自由気ままで自己中心的な思考の持ち主なんだけれど
どうしても嫌いになれない理由にはちゃんと愛されてたって記憶があるからなんだろうな。
特別何をしてくれたでもないのだけれど、
わたしの「お姉ちゃん」でいてくれたって事実こそが
たぶん、愛。

また仕事に戻ろうとするわたしに、妹の方の姪っ子ちゃんが
ドヤ顔でくまのぬいぐるみを差し出してくれる。
「はい、なーり。くまさん貸してあげる。これで寂しくないでしょう?」

確かくまのぬいぐるみは2つあって、姉妹それぞれに自分のものを持っているはずだった。

でもそのとき彼女が差し出してくれたのは彼女自身のぬいぐるみではなく、お姉ちゃんのくまのぬいぐるみだった。

「ありがとう!嬉しい。あれ?でもそのくまさんは、お姉ちゃんのくまさんじゃないの?」

首をかしげるわたしに妹ちゃんは続ける。

「そうだよ!だってわたしのくまちゃんはわたしのものだもん!」

…恐るべしプチジャイ子!笑

「あのね、妹ちゃん。ありがとう。すごく嬉しいけど、そのくまさんはお姉ちゃんのくまさんだよね? 貸してくれるの、すごーく嬉しいんだけど、もし貸してくれるなら自分のくまさんを貸してもらえたらなーりーもっと嬉しかったな。お姉ちゃんはくまさんいなくて寂しいかもしれないよ? なーりーは大人だから、寂しくないよ。大丈夫!ありがとうね」

そう言うとちょこっとしょんぼりしちゃった妹ちゃん。
大人気なかったなーと思うわたしが
ポンポンと妹ちゃんの頭を撫でると、お姉ちゃんの方ががさっきのくまさんをわたしに差し出して言った。

「はい、なーり。じゃあわたしからなーりにこのくまさんを貸してあげる。そうしたら全部大丈夫でしょう?これでみんなさみしくないね?」

まじかよお姉ちゃん。
わたしは泣きそうになってしまった。

末っ子のわたしは可愛がられてきたと聞いていたけど
正直実感が伴っていなくて
大人になっても両親からの愛情不足をどこか姉のせいにしていた。

そうやって自分を正当化してきたんだと思うけれど、多分なんてことはなく、姉にもたくさん我慢させてたんだろうな、と、姪っ子姉妹を見てはじめてわかった。

最近結婚して、初めて姉が帰省しないお正月。
勝手にいろんなことを感じてじんわり感動していると
姪っ子ちゃんが重ねてわたしに話してくれる。

「あのね、なーり。なーりのお姉ちゃんよりも、なーりの方がすきだよ!!」

「え!?嬉しいけど、、、どうして?」

「うんとね、なーりのお姉ちゃんには旦那さんがいるけど、なーりにはいないから!!!だからその分たくさん好きでいてあげる!!(満面の笑み)」

やっぱり結構容赦ない姪っ子ちゃん。
ありがとう。恋人も旦那さんも居ないから引き続き大好きでいてください!!!

お姉ちゃん、悔しいけれど、多分たくさん愛してくれてたね。
ありがとね。
風邪引くなよ!

そんなこんなで2本目のブログです。

近くにある愛はなかなか見えづらいけれど
時間が形を変えて教えてくれたりもするよね。

愛を知られて、わたしは嬉しい。

最後まで読んでくださってありがとう。

それではきっと、またあした。

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