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Labの男63

 Labの男63

季節外れの花が店頭に飾ってあった。
一見、傲慢とも思えてしまうほどの美しさ
 「デンドロビウム」 
ラン科の中でも最も種類が多く
現在日本での
品種改良が世界トップレベルを誇る。
園芸店では冬に満開の株が販売されるが
通常の開花期は春 多年草で20〜60cm
ブーケや花束に適しているので
結婚にたどり着いた運命の2人の祝福
結婚祝いのプレゼントに最適な花言葉は
「お似合いの2人」

別の駅前花屋さんで聞き込みをする明智。
聞いてる最中から
フラワーガールの解説を
「なんだかウソくさいなぁ」と思う明智。

歴史的背景や文化、伝承などに基づく花言葉は
ヨーロッパ宮廷文化を起源とし
19世紀ビクトリア時代イギリスで流行し
多くの花言葉が付けられた。

「そんなに大層なモノかね?花言葉って?」
思いつつも話を聞いてる明智
特にジェイソン楠木はその「デンドロビウム」を
好んで買うらしく何か手がかりになるかと
聞いてみたが段々と飽きてきている。

ジェイソン楠木の尾行を続けるなか
万次郎は引っかかっていた。
仕事っぷりだけを見ていたらまったく問題は無い。
好印象でしかも仕事が丁寧そうだ。
しかしながら、仕事をしていない状態だと
はたして
彼には世の中が見えているのか?
玄白や万次郎のようにマイペースだろう事は
まだ分かるが、違和感が付きまとう。
なんだったら、ジェイソンの目の前に
明智、万次郎が何度現れようとも
気にしないんじゃないか?とも思えてきた。
彼は彼だけの周波数帯に生きていて
隔離された独自の世界に生きているんじゃないか?
ぐらいが大袈裟だが、いちばん腑に落ちる。
それくらい細々と淡々と真面に異様。
ジェソン楠木氏には
世の中なんてとるに足らないんじゃないか?
または、もっと大切なモノを中心に
生きているんじゃないのか?と
そうこうしている内にまた
違う会社へと飛び込んでいったジェイソン。
行く先々、会社の者には
素敵な笑顔で対応できてるのは
ホンモノっぽいが、この違和感
何なんだろうか?

別の会社に入っていったジェイソンを見送り
万次郎は率直に明智に聞いてみる。

「明智さんっ
 ジェイソン楠木っておかしくないですか?
 ビジネス街の本宮町は
 まだ暴動の最中でしょ?
 あまりにもあっさりしてません?
 何だったらボクの方が気になってますもの」

 「そうだなぁ、まるで自分が見てないモノは
  存在しないくらいのマイペースっぷりだ。
  意に介さないのは度を越している。
  ある種、病的だな」

「それに全然、凄腕エージェントには見えません。
 片鱗すら垣間見れない。
 少しは、あふれ出しちゃうものでしょ?」

 「プロフェッショナルのカタチは
  色々とあるからな。まだ分からんよ。
  ただ明智の肌感だと
  彼はエージェントではない」

「そうでしょ!だってジェイソンがもし
 宇宙人だって言われても
 そうだろうなぁって思っちゃいますもん」

 「上手いこと言うねぇ、確かに
  outer spaceのヒトだね。
  ビジネスに徹していて
  地球文化との交流はあっても
  ハートからではなさそうだ」

ジェイソン楠木は
会社から出てくると駅へと歩き出した。
するとさっき来た方面から逆方面のホームへ
電車に乗りこむジェイソン。

万次郎
「まさか、また
 自宅に帰えるんじゃないでしょうね?」

 「それは流石に……」七三分に触れる明智

万次郎のカンは的中
自宅の玄関
こじんまりしたライオンゲートを開け
また帰宅
しばらくして慌てて出てくるジェイソン
どこかで聞いたセリフだ。
 「ああぁ〜また忘れないようにって
  思ってたのになぁ」

額に人差し指を当て明智
「デジャヴだな。万次郎っ」

 「これは、完全再現してます。
  デジャヴですね。そうなると
  花屋に向かいますね」

少し怖くなってきた明智and万次郎
やはり、ふたたびデンドロビウムを手に

「あの白い花は確か、フラワーガールにさっき
 聞いたんだよ!え〜っとそう!
 デンドロビウムだ!」

「白のデンドロビウムは「純粋な愛」
 「誘惑に負けない」たしかそんな花言葉だよ」

 「清潔感ある白色は
  結婚式とかの贈り物に最適。
  でもそんな頻繁に結婚式とか
  ありませんよねって
  言ってたから覚えてたんだよ」

数分後ライオンゲートから飛び出してきて
また駅へと歩みを進める。
仕方なく明智and万次郎は後を追う。

 「万次郎はさ、来栖さんに鍛えられたから
  少しはヒトの思考を読める様には
  なったんだろ?」

「そうですねぇ、言葉としてではないですけど
 以前よりもヒトが どうしたそうだ とかの
 行動が少し読める様になったと思います」

 「なるほど、それじゃ話すけど
  ジェイソンの思考が全くっていうほど
  読めないんだよ」

「どういうことですか?」

 「どうも、やっこさん
  何も考えて無さそうなんだよな。
  修行僧みたいに静寂な感じなんだよ。
  雑念がないっていうか
  空っぽなんだよ。
  何だろうな?
  異様って言葉しか思いつかないんだよ」

「そうですよね、ボクもちょっと
 ニンゲンぽく感じれないんです。
 普通もう少しフレれ幅があって
 波がある感じなんですけど」

 「おぉ!万次郎っ成長したな〜ぁ
  この違和感を感じれるのは素晴らしい!
  たいしたもんだよ。
  やっぱ来栖さんはさすがだわ。
  玄白と明智だけだったら
  この短期間では無理だったろうな。
  そこまでの成長は促せんな」

さぁ〜て、今度はどこの駅で降りるかな?
電車に乗り込みしばらくすると
突然車内放送が流れて〜

 〜 毎度〇〇電車のご利用      
   有難うございます。       
   まことに急ではござますが    
   只今、本宮町は閉鎖されています。
   しばらくの間は下車できません。 
   大変危険ですので        
   本宮町を大きく迂回して下さい。 
   手前の駅が終点となります。   
   以降の移動は別の交通機関を   
   ご利用下さい。         
   くれぐれもご理解のほどを    
   よろしくお願いします。 〜

するとなんて事なく臨時終点駅で
下車するジェイソン。

「おいおいっこのタイミングで本宮町に
 向かうんじゃないだろうな?」

 「勘ですけど
  彼、向かうんじゃないですかね。
  暴動なんて、取るに足らないんじゃ〜
  ないでしょうか」

「かぁ〜
 嫌な予感は当たっちゃうからなぁ。
 参ったねぇ」

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