自己啓発の罠を抜けるには物語を見直せ

またメタ自己啓発本を読んだ。

これは戦略や戦術を教えるのではなく、ゲームそのものを見直すことを迫るタイプの本だ。自己を改善したいのであれば、自分だけでなく、政治・社会にアプローチすることが必要である、と。

本書もまた自己啓発が蔓延した現在の状況を問題だと捉えている。人々はより良くならなければならないというプレッシャーを感じており、様々な自己啓発のテクノロジーやサービスによって突き動かされている。

なにしろ自己啓発は金になる。まずより働けと追い立て、常に改善し続けることを求める。そこで改善のツールを提供することで儲ける。人々が頑張って燃え尽きたら、今度はリラックスする方法を提供することで儲ける。回復できないのは自分の責任、これを使って心の疲れを取りましょう、と。つまり自己啓発は改善と回復の二段階で金を取る仕組みとなっているわけだ。

ではどうしたらいいのか。最近紹介した『地に足をつけろ!』では、ストア派の教えを活用し、加速文化に対するアンチテーゼを提供していた。

これはこれで一つの手だが、あくまでも手法が逆であるだけで、自己啓発のゲームをプレイしていることには変わりはない。まさにストア派の思想の通り、変えられること、すなわち自分にのみフォーカスを当てている。上手く行かない責任は自分にある。他責NG。

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