自己啓発という現状の否定に対する否定の本

読んだ。

本書はタイトルにもある通り、加速文化に対するアンチテーゼである。加速文化とは、「変化と効率」を求める風潮のことだ。現代は常に変化を求められ、「変わらなければ生き残れない」と言われる。これは正しい一面もあるが、そのプレッシャーに耐えられない人もいる。

以前にこの記事で「長寿化」と「テクノロジーの進化」により、「人生の中で何度も変化を求められる」と書いた。それに対してこんなコメントがついた。

ずっと勉強、ずっと変化、ずっと仕事、とかツライ。主人公は高校生だから、ここぞの集中力も気力もあっただろうけど。年々最低限の仕事をこなすのですら辛くなっている。そろそろ安楽死かベーシックインカムが必要。

sc3wp06gaのブックマーク

このようなコメントを「変化に適応できない負け犬」と切り捨てられたら楽だが、こう言いたくなるのも分かる。常に変化を求められるというのは、ずっと追い立てられているようで、安寧の時が訪れることはない。それは幸せな人生なのか。

そんな人のために本書がある。本書は「心の平穏」をゴールに、加速文化で求められる行いを一つ一つ反論し、主流の価値観が絶対ではないことを教えてくれる。各章のタイトルを見れば、明らかに真逆であることが分かるだろう。

第1章 己の内面を見つめたりするな
第2章 人生のネガティブにフォーカスしろ
第3章 きっぱりと断れ
第4章 感情は押し殺せ
第5章 コーチをクビにしろ
第6章 小説を読め 自己啓発書や伝記を読むな
第7章 過去にこだわれ

もちろん、本書で提示される「教え」も万能ではない。自分の内面を見ても意味がない場合もあれば、そうでない場合もあるはずだ。さらに本書の中でさえ、「ネガティブにフォーカスしろ」と書いた後で「ネガティブな感情を抑えろ」なんて書いている。結局何が正しいのか。

著者はこの矛盾に自覚的であり、こう述べている。

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