キンモクセイの香りと共に思い出す風景
秋が一番好きだ。
特に金木犀の香りがあちらこちらから漂ってくる今の時期。
金木犀そのものを確認できなくても香りは街中に充満しているのではないか思うほど。
風に乗ってふわりと濃い香りに包まれると、その昔から知っている季節感にしばらくうっとりとしてしまう。
こうやってポチポチと文字を打っている今も、窓からかすかに甘い香りがする。秋は良い。
◎
キンモクセイ 君の香りと 間違えた
この季節の訪れと共にかならず思い出す一句。
中学生の頃、担任の先生が学級通信に書いてくれた句で、恋に恋する集団だった私たちは色めき立った。
担任の先生は国語教師で毎日のように学級通信を書いてくれた。
内容は学校行事の感想や日常のクラスの課題、社会時事、エンタメ(矢沢永吉の話も多かった)、先生の趣味にまつわること、思い出など。
noteみたいなものだ。
私はこの学級通信を読むのが楽しみだったし、おそらくそれは私だけではなかった。
先生の文章は面白かった。
今でも覚えているのは流行歌の話。
その頃売れに売れていたPUFFY。曲を作っていたのは奥田民生で、奥田民生の作る曲はビートルズ系である。GLAYはBOOWY系。というもの。
この文章のまとめがどうだったかは忘れてしまったが、有名ミュージシャンも誰かの影響を受けて今があるのかと。
ただ有名人は有名人で、どういったバックグラウンドがあるかなど考えたことがなかった中坊には目からウロコだった。
あとはUAの歌詞を用いて擬人化が多用されていることを書いたり、ASAYANオーディションについて書いた号もあったな。
そして秋の例の一句。
この号は先生の恋の思い出について書いたもので私にとってはまさに神回だった。
内容はうろ覚えで、たしか恋は盲目みたいな話だったと思う。
ただ、友人と太文字で書かれたこの句をみてかなり盛り上がった。ロマンチックすぎる!!
当時好きだった子が夕方、徒歩通学だった私を自転車で追い抜いていく瞬間。
日が短く部活帰りには夕焼けで、どこからともなく金木犀の香り。
人生の中でも最大級にロマンチストだった中学生の私は先生の学級通信を思い出す。
キンモクセイ 君の香りと 間違えた
あの学級通信が余りにも印象的で、20年以上経った今でも金木犀の香りがする度に頭に浮かぶ。
先生のあの一句と、夕焼けの中で自転車に乗る彼の姿…と言いたい所だが彼の顔は全く思い出せない。
思い出すのは、恋と香りと心地良い風と素敵な言葉と、その美しい瞬間にうっとりする自分。
そうだ、自分のことだ。恋に恋してたからねー。
香りと共にそんな風景を思い出し、あたたかい気持ちになるのだ。青春ってすばらしい。
長男は5年であの年頃になるのか、という軽い衝撃。
子供たちにもそんな青春が近い将来やってくるのだな。彼らそれぞれに青春を謳歌してくれたら、と母は思う。
秋は良いなあ。
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