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もしもピアノがひけたなら

ピアノを習いたかった。

ピアノを習えば練習するピアノ、あるいはそれに代わるものがいる。
場所がいる。
そして月謝がいる。

「ウチは貧乏やからな。」
そうさらりと言ってのけた母。
たしかに脱サラし自営業をしていた父は昼間家によく居た。(夜はわりといない。)

とにかく気が小さく、甘えベタだった幼少期の私。
母の「ウチは貧乏」の呪いも効果を発揮。
ピアノを習いたい!なんてとてもじゃないけど言えなかった。


時は流れ、一年半前。

年長の長男は私にこう言った。
「お母さん、ピアノ習いたい。」

夫の両親の家が向かいにある。
そこにはピアノがあり、かつては夫と義姉もそこで練習していた。
毎日のように夫の実家には出入りするのでピアノが気になったのだろう。
実際に触らせてもらったりもしていた。

ピアノを習いたいと言い出した長男。

まず最初に、私は弾けないから教えられないなと思った。

いや、まてよ、これはチャンスかもしれない。
私も一緒に練習しよう。
ちゃっかりピアノを弾けるようになってしまおう。

すぐ近距離の個人レッスンをしてくれる教室に電話し無料体験をさせてもらう。
やっぱり習いたい!となったので申し込み、一年生の春から始めたのだ。


あれから一年半。
長男も両手が同じように動いてしまうこともなくなった。
伴奏付きの曲を練習している。

私はというと。
長男よりうまく弾いてやる!と闘志を燃やし、憧れのピアノの練習に励んでいる。
同じく両手が同じ動きをしてしまうようなこともなく、夫の両親の家で、長男のテキスト通りに練習を進めている。

母親がピアノが弾ける人であれば、家でもしっかり教えてあげられるだろう。

でも母親が一から一緒に練習するのもなかなか良い。
難しいところは二人で「ここ難しいなー」と言いながら繰り返し練習する。
たまには「◯◯よりお母さん絶対うまくなったるからな。」と大人げなく挑発したりする。
長男と二人、切磋琢磨している。

ずっとピアノを習いたかった。
ピアノは思ったとおり楽しい。

30代になってピアノを始めるきっかけをくれた長男にありがとうと言いたい。
そして、いくつになっても新しいことは始められるんだなということ。


願わくは、長男には私よりもうんとうんと上手く弾けるようになって欲しいと思っている。


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