美容室での会話問題と、その他もろもろ

腰下まで伸びた髪を襟足まで短くした。

理由はいくつかあるけれど、決め手になったのは、肩こりとそれに起因する頭痛が頻発していたことだ。頭髪の重量は馬鹿にできない。以前の長さだと、髪が水を含むだけで頭が後方に傾きそうになるほど重たくなっていた。

首や肩の筋肉に、少なからず負担がかかっているはずだ。

近頃は頓服のはずの頭痛薬と湿布を毎日使用している状態だった。これだけで毎月5,000円近くかかる。市販薬とはいえ、薬代も馬鹿にならないのである。なので今回の美容室は、この頑固な肩こりと頭痛の要因を1つ潰してやろうという試みなのだ。

「襟足まで切ってください」と注文したら、美容師さんはお手本のように目を丸くしていた。

「切りますよ? 切りますね?」

そして、なぜか私よりも切るのを躊躇していた。確かにショートカットの注文は難しいと聞く。

緩く縛った後ろ髪を肩くらいの長さまでザクザクと切り落とし、それからシャンプー台に向かう。歩きながら、床に落ちた長い髪を見て「大漁だな」と思った。すでに頭が軽い。

私はもともと、丹念に髪を伸ばしていたわけではない。

美容室でのシャンプーやマッサージが苦手でカットを先延ばしにしていたら、結果的にここまで伸びていたのだ。そして限界まで髪が伸びたところで一気に切り落とす。ものぐさな私のヘアスタイルはこれの繰り返しだ。

だからまあ、大胆に髪を短くすることにあまり抵抗がない。後悔もない。

いや、後悔はひとつだけある。切った髪をヘアドネーションできなかったことだ。これは本当に「やっちまったな」と思っている。私がまた不精をして腰下まで髪が伸びてしまったら、今度は忘れずに髪を寄付しようと思う。

ところで、私にはいくら考えても一向に答えが出ない疑問がある。美容師さんとの会話問題だ。口下手な私はいつも、美容師さんの質問に答えるだけのインタビュー形式に落ち着いてしまう。

これを何とか「談笑」と呼べるところまで持っていきたい。

そうするためには恐らく、私からも何か話題を持ちかけた方が良いだろうとは思うのだが、これが難しい。私はスポーツ観戦なんてしないし、芸能人にも疎い。

今年猛威を振るった「なんちゃらウイルス」をはじめとする時事ネタであれば多少は知っているが、それでよく知らない人と盛り上がれるほどのトークスキルはない。

今回も結局、「年賀状の準備は済んだか」とか「今年は紅葉が遅い」とか「私(美容師さん)は今年から年賀状を出すのをやめた」とか、そういう無難なやり取りを4つか5つくらいして帰ってきた。ちなみに私は年賀状をここ数年出していない。

沈黙を「気まずい」とは思わないタチなので、黙々と施術に集中していただいても一向にかまわないのだが、サービスの品質的な観点から考えると、顧客に愛想よく話しかけた方が「親切・丁寧な接客」になりやすいだろうなとも思う。

となれば、一生懸命接客してくれている美容師さんに「黙って集中しろ」と十把一絡げには言えないのである。なので、美容師さんとの会話問題は、私が対人スキルを向上させる以外に解決策がないようにも思える。

美容室に行くたびにこの問題について考えるのだが、行き着く先は大体一緒だ。「対人スキルを向上させる」。これは実りのない会議でよく出る「品質向上に努める」と同じくらい中身のない答えである。つまり、何も決まっていないのだ。もちろん今回も決まらなかった。

今日で髪を切って数日経つ。

頭痛は少し改善されたものの、肩こりは依然として治らない。本当に頑固な肩こりだ。

安物のマッサージ機では歯が立たないので、低周波治療器の導入を検討しているのだけど、生まれてこの方使ったことがないものだから少し躊躇している。

人の手でマッサージを受けるのが苦手だと、どうしても機械に頼らざるを得ないのが難儀だなと思う。プロのマッサージ師は、私の凝り固まった筋肉を機械よりも的確にほぐしてくれるだろう。と、勝手に思っている。

期待した効果は得られなかったものの、ショートカットになるだけで生活はとても快適になった。

ドライヤーの時間が短縮されたし、イヤホンが髪に絡まないよう注意を払う必要もない。ブラシがすぐ毛だらけになる問題も解消された。

頭が身軽になった今、改めてロングヘアの生活を振り返ると、美しい髪質を保ったまま丁寧に伸ばしている人はよくやっているなと感心する。私には真似できない芸当だ。

豊かな玉鬘なんて欲しくないと言えば嘘になるけれど、当分はショートカットの気楽な生活を楽しもうと思う。今の私には、短い髪の方が性に合っているのだ。

さて、今日も頭が軽い。

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