No.4『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』ーフリースタイル書評バトル第4回「ツッコミワードの魔術師芸人」
■第4回「ツッコミワードの魔術師芸人」参加芸人
当記事は、こちらの参加者のうち誰か1人が執筆したものです。
・トム・ブラウン 布川ひろき (ケイダッシュステージ)
・カミナリ 石田たくみ (グレープカンパニー)
・トンツカタン 森本晋太郎 (プロダクション人力舎)
・オズワルド 伊藤俊介 (吉本興業)
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No.4『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』
エッセイが好きである。
小説のような完全な作り話も好きではあるのだが、本に関して言えば、エッセイは時折、いいものを読んだという感覚にもう1つプラスアルファを感じることがあるから。
あくまで僕個人の意見であるので、お前になにがわかるんだと言われたら、こちらもこちらでエルボーandナックルですよといった心情なのだが、いいエッセイを読んだ後は、この人に会ってみたいと思うのである。
『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』を読み終わった後もまた、この文章を書いた人に会ってみたいと思ってしまったのだ。
作品自体の主軸は、茶道の先生と出会い茶道を通しての、作者である森下典子さん本人の心情の変化。
もちろん茶道に関しての情報など、コックピットくらい狭いところでやるあれでしょくらいのもんだったので、ほぼ手ぶらで茶道の世界を覗かせて頂いたのだが、予備知識などなくともどっぷりと浸かることができた。
なぜならば、森下さんの言葉はとても凜としていて、日本語を立たせているし、とても正直なのである。嘘がないというよりも、とてもとても正直なのだ。
正直であるから、わからないものを無理にわかろうとしなくていいと言われてる感じがして、次々と知らない道具やルールなどが出てきても全く苦ではなかった。
完全に知らない世界のことを知ろうとする時のストレスってのは意外としんどいもんで、こっちのラインに立ってると向こうの人の言葉なんて鼓膜まで辿り着かないことがほとんどだ。しかし森下さんは、茶道を始めた頃の気持ちを純度100%で鮮明に覚えているため、その言葉1つ1つに嫌味がまるでない。
あの時の、その時の、この時の、今の気持ちを見事なまでに正直な言葉で放つのである。
だからこそ、作中に登場する、とにかく粋で乙でかっこうのいい「先生」と呼ばれる茶道の師匠との出会いも引き寄せることができたのだと思うのだ。
自分に自信がないなどと思う瞬間なんて腐るほどあるが、そんな時僕は身の回りの人間のことを思い出す。素敵な人達ばかりじゃないの。そう思うと、こんな人達に囲まれてる自分が、くだらない人間なわけがないと思えてくる。
森下さんが先生と出会えたことも、作中の森下さんの言葉や感じ方から、森下さん自身の魅力により引き寄せたものだと思わされる。
いいエッセイを読むとその人に会いたくなる。
きっとあなたも、森下さんの人生に触れてみたくなるはずである。
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