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亡き祖父の命のきらめく花壇を描いた《呼吸する花》

《呼吸する花》2020年、CG

この作品は、2013年。亡くなった祖父の四十九日に撮影した写真を元に作りました。

背景の花は生前、祖父が大切に育て手入れしていた花壇の一部です。祖父は農家で花をたくさん植えたり、庭の木を鳥の形に切ったり、植物を育てるのが大好きな人でした。祖父母は九州に住んでいたのですが、子供の頃は毎年のように夏休みに帰省もしていました。いつも帰省の度に美しい花や木々が明るく出迎えてくれるということは当たり前の見慣れた美しい光景でしたが、祖父が亡くなってから急に庭が気になり、四十九日の日、数枚、衝動的に撮影をしました。

祖父が亡くなって庭も死んでしまった

残念なことにこの四十九日以降、現在は庭を同様に維持できるものがおらず、鳥の形をした木も切られ、庭の花も荒れ、以前の姿はほとんど残されていない殺風景な景色に変わってしまいました。祖父はあまりお喋りではなく、生前ほとんど話をしたことがありません。しかし、たくさんの思い出があります。小学校のとき、夏休みの宿題が間に合わないでいたらこっそり私の代わりに竹細工で貯金箱を作ってくれたこと、甲虫を取りに行ったこと、夏祭りにいったこと、絵を褒めてくれたこと。庭が消えてしまってから人が亡くなるということがこんなに周囲に影響するものかと実感しました。心にぽっかり穴が空いたように庭に明るさが消えました。もしかしたら、生前の祖父は誰か人が来た時に明るく元気になるようにと思って庭を手入れしたのかもしれません。何も話さなくても、その人の存在の大きさがいなくなることで気づくこともあるのですね。命のこもった庭だったのです。

遺影は似顔絵にしてくれ

葬儀が終わって、たまたま祖父の部屋に入った時、そこに一枚の絵が飾ってあるのに気づきました。それはいつしか子供の頃に私が祖父をモデルに描いた稚拙な似顔絵だったのです。私自身は描いたことすら忘れていたのですが、よほど嬉しかったのか長い間大事にされていたんだなあ、と私まで嬉しくなりました。後日、母から聞いた話によると、祖父は生前「自分が死んだ時、遺影はあの似顔絵にするように」と伝えていたのだそうです。実際は流石に遺影を子供の絵にするのはまずいだろうと親族が普通の写真にして、葬儀を行いました。私には黙っていたのだそうですが、その話を聞いて、そんなに大事に思っていてくれた祖父の思いに初めて気づき、一人でちょっと泣きました。

「呼吸する花」で描こうとした問い

この写真を撮影してから早いものでもう7年になります。7年間の間にこの写真をもとに何か描こうとしましたが、なかなか手が動きませんでした。つい最近「運命(抗えないこと)とは何か」を描こうと思いこの絵を描く事に決めたのですが、その時、命の重さや魂のエネルギーの源の象徴としてこの庭の花を背景にできないかと考えました。今はない花壇ですが、これをモチーフにして先祖など目に見えない存在との繋がりや、命と命との様々な関係を振り返ることを表現しようとしました。そして、これは私の絵を大事にしてくれていた亡き祖父との新しい命を持ったコラボレーション作品となります。

最後に

あなたの人生をかけた願いは何ですか。それについてぜひ考えてくださるきっかけになれば嬉しいです。この文章を最後まで読んでいただきありがとうございます。

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