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陰キャは、深く、深く、もぐれ

陰キャと陽キャという言葉があるみたいで、人間をその2つに分けるとしたら私は陰に入ると思います。

これは自虐ではなく、むしろ「陰キャとは上手いこと言ったもんだなぁ」と納得したくらいです。

陰と陽は、優劣の話ではなく性質・属性の話ですから、優等生・劣等生みたいな分け方よりよっぽど人間らしいんじゃないかな。

「深く、深く、もぐれ!」

これは、中学くらいで見たなにかのサイトに書いてあって、ずっと頭に残っている言葉です。

広く、高く、明るく、はできないけど、「深く深くもぐれ」なら好きかも、と思ったのを覚えてます。

陰は陽を目指す必要なんてない。心のまま深く深くもぐって良いのだと思います。

さて、このnoteは、毎日お風呂で読書する私が、追いだきボタンを押すほど夢中になった本を紹介するというものです。

1から読んでくださる方はこちら

21 『檸檬』 梶井基次郎

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主人公は鬱々とした気分を抱え、体調も悪いひとりの青年。果物家でひとつの檸檬に惹かれ買い求める。しばらく香りや感触を楽しんだ後、古本屋の本の上に置いて帰り、檸檬が爆発することを妄想する……というお話。

昔ネットスラングで「リア充爆発しろ」なんて流行ったけど、檸檬の主人公の感情ってこれなんじゃないかと思う。

それでいうと、なんで両方爆発なのかな。憂鬱な人間が人生上手くいってる奴らに吐き捨てるなら、遊びすぎて留年しろの方がしっくりきませんか。

きっと、本当は八つ当たりだとわかっているから、強い言葉が使えないんだ。まず起こり得ない「爆発」って言葉で冗談めかして、その中に本物の悪意を包み隠してるんじゃないか。

「俺が置いてきた檸檬が爆発して本屋さん木っ端微塵になれ」は「豆腐の角に頭ぶつけて死ね」に通じるものがあるなぁ。

高校2年生のとき、檸檬の主人公の気持ちが知りたくて熱のある日に散歩をしたことがあった。田舎すぎて檸檬を売っている果物屋どころか八百屋もなかったので神社でお参りして帰った。

22 『アルケミスト』 パウロ・コエーリョ

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この本について上手く話せないのだけど、星の王子様が好きな人なら好きだろうという感じ。

クリスタルグラス屋の老人が少年に言うセリフが大のお気に入り。

少年は旅の途中で出会ったクリスタルグラス屋の老人のところに居候する。たくさんのアイディアを出して店を儲けさせるのだけど、老人の元気はどんどんなくなってしまう。

「おまえさんはわしにとって、本当に恵だった。今まで見えなかったものが、今はわかるようになった。(略)しかし、おまえはわしに、今まで知らなかった富を世界を見せてくれた。今、それが見えるようになり、しかも、自分の限りない可能性に気がついてしまった。そしておまえが来る前よりも、わしはだんだん不幸になってゆくような気がする。なぜなら、自分はもっとできるとわかっているのに、わしにはそれをやる気がないからだ」

私は学生のころ、この老人のような人たちを見下していたような気がする。だけど26歳でアルケミストを読んでみて、「こういう気持ちって表に出していいんだな」と安心した。

アイディアマンといると楽しいけどしんどくなる。ちょうど心地よい箱に収まっている自分を非難されているみたいで。

23 『姑獲鳥の夏』 京極夏彦

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今まで生きてきた世界がぐるりと回転するような衝撃があった。新しいことを知るっていうのは、自分に何かが付け足されることではなく、自分を破壊することなのかも。

本が大好きになったきっかけの一冊。ページをめくる手が止まらなくて、読み終わった後なにも手につかなくなってしまった。

手に負えない苦しいことも、名前を付けて自分と切り離せば、それを払うことができる。
16歳のとき、この一点に深く納得して、人生をかけてたくさんの言葉を覚えようと思った。言葉にされること自体が癒しになるっていうのは当たっている気がする。

24 『くすぶる力』 齋藤 孝

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この先の人生、何度でもくすぶりたいと思った。(わりとくすぶりっぱなしな気もするけど)くすぶった人間特有の魅力とか深さ、執念のようなものを言語化した本。

あと、この本を読んで初めて大学に行ったことを肯定できました。笑

順調に張り合いがあった中学・高校。成長実感があった社会人生活に対して、大学の4年間って何してたの?とずっと思ってたんです。

思えばあの4年間私はくすぶっていて、
さらに思えば、もっともっと深くくすぶるべきだったんだ。

充実したキラキラキャンパスライフじゃなくて良かった!と心から思える本です。笑

25 『コンビニ人間』 村田 沙耶香

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コンビニ人間の主人公はコンビニバイト歴18年の女性。世間が作る普通の女性像にどうしても合わせられなくて、「普通の振る舞い」をバイト先のコンビニでインプットしていく。

マニュアルに従えばコンビニ店員として存在できるし、バイト仲間から会話のリアクションや表情を学べば「普通の人間」になれる。なにもいらないから、静かにこのままコンビニ店員として生きていたい。

この感覚、ちょっとわかるなぁと思った。
私は電車の乗り換えがすごく苦手で、週2で通っている会社に行くのにも電車を間違えてしまう。
遠方に行く時は、2回の乗り換えで3回間違えたこともあった。そんなとき「電車を間違えた」というと怪訝な顔をされてしまうので「寝坊した」と言うことがある。

世の中には、「登録済みの性質」と「未登録の性質」がある。
寝坊は登録済み、週2で乗る電車の乗り間違えは未登録だ。

世間を変えることなんてできないけど、せめてできるだけ多くの性質を受け入れられる人間でありたいと思った。

まだまだ先は深い

仕事がなければ一日中本を読んでいられるのに!と思うのですが、実際仕事がなくなってみると大して読めないんです。

これは個人差があると思うのですが、私はやるべきことをヒイヒイこなしている方が、趣味も捗るタイプみたい。

本を読むのももっぱら電車やお風呂ですから、日常生活の合間を縫うような読書がちょうど合っているんだろうな。

偉そうに「深くもぐれ!」なんて言いましたが、私はまだまだ浅瀬で遊んでいるにすぎないのかもしれない。


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