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沼る20代


20代前半、何に沼っていたか思い出せますか?
まだ10代の少年少女たちは、何に沼りたいですか?
私の20代前半は、異性に沼り、仕事に沼り、勉強に沼っていました。
その頃の自分の心の中はさて置いて、王道の沼はやってやった感があります。今思えば。笑
純粋な心で人を好きなり、どんどん沼にハマりました。
仕事や資格取得で周りの同世代を見て羨み、焦り、自分も「何者か」になろうと必死だった(のだと思います。)



「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」

主人公は彼女のこのひと言をきっかけに、大学4年の頃から社会人になってしばらくの間、既婚女性との期限付きの恋愛にのめり込んだ。
これ以上の人と出会うことはもうないと思うような恋愛(この感覚がもうすでに懐かしい…)
そんな大恋愛は、相手が既婚者であるが故に後に大失恋することとなる。

職場で出会った同僚とは親友となり、恋愛の傷を癒やすにも、仕事の愚痴をこぼすにも良い話相手となった。
クリエイティブな仕事をしたい!という気持ちで会社に入り出会った2人だが、現実はそんな夢を叶えられるような会社ではなかった。
親友は少しでも夢の実現に近づこうと数年後には転職するが、主人公にはそれができなかった。

このままでいいとか、悪いとか、そう悩む時期はとっくに通り越して、大きな会社の構成員であることに喜びを見出し、やりたかったことよりも、財布の中身を豊かにすることに感動して、生きていくのだとおもっていた。
明け方の若者たちP.83

そう思っていたのに、結局全然そんなことはなかった。

転職をしてより良い環境に身を置こうとする者、卒業後から(しっかり?なんとなく?)そこに根を張り、ずっと同じ会社で働く者。
まさに私の周りで起きていることそのもの。

「こんなハズじゃなかったって、いっぱい言ってきたじゃん?」
明け方の若者たちP.207

そうそうそう。何十回も何百回も思ってきた。
何者にもなれない未来が見えて、人生が悔しかった。なんならいまだに悔しい。笑

「でも、二十三、四歳あたりって、今おもえば、人生のマジックアワーだったとおもうのよね」
明け方の若者たちP.207

社会人になって学生時代よりはお金があるし、頑張れば休みもとれるし、体力もあるし、体力があるから時間も作れたのがこの歳の頃。

人生のマジックアワー

それ以降は、結婚したり親の介護だったり、自分が「何者か」になってしまう。

「だって、何者か決められちゃったら、ずっとそれに縛られるんだよ。結婚したら既婚者、出産したら母親。レールに沿って生きたら、どんどん何者かにされちゃうのが、現代じゃん。だから、何者でもないうちだけだよ、何してもイイ時期なんて」
明け方の若者たちP.41

あと数年もすれば、私も「何者か」になってしまうのかもしれない…。
「何者か」になりたかったはずなのに、読み終える頃には「何者でもない」ほうが良いとさえ思える。

何をしてもイイ、何でも沼ることができる「何者でもない」20代前半が最高に輝かしい。
物語の最後はたった14文字の一文が、主人公の失恋の悲しさと、人生のマジックアワーが過ぎ去ってしまったことの悲しさを感じさせます。
このたった14文字でゾワッとしました…。
ここはぜひ、実際に読んでゾワッとしていただきたいです。笑

「20代」「若者」らしさがぎゅうぎゅうに詰め込まれた、懐かしい心の動きを味わえる一冊です🕊


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