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小説『余命10年』 主人公と同じ病気の僕が感じたこと

『余命10年』この小説は読まないといけないと思っていました。しかし、この小説を知ってからすぐには読むことが出来ませんでした。その理由は、僕はこの小説の主人公(茉莉さん)と同じ病気と診断されているからです。2023年8月某日やっと読む決心がつき、読んでみて僕の最初の感想は、


号泣や感動ではなく……怖かったです。

感想ではネタバレを含みます。ネタバレを含んでいても大丈夫な人だけ読んでください。




『余命10年』小説の基本情報

余命10年 小坂流加(著)

小説あらすじ

死ぬ前って、もっとワガママできると思ってた。
二十歳の茉莉は、数万人に一人という不治の病にかかり、余命が10年であることを知る。笑顔でいなければ周りが追いつめられる。何かをはじめても志半ばで諦めなくてはならない。未来に対する諦めから死への恐怖は薄れ、淡々とした日々を過ごしていく。そして、何となくはじめた趣味に情熱を注ぎ、恋はしないと心に決める茉莉だったが……。
衝撃の結末、涙よりせつないラブストーリー。   (Amazon より引用)


小説で描かれている不治の病について


この小説で描かれている主人公の病気は『肺動脈性肺高血圧症』という病気です。どのような病気かというと、心臓から肺へ血液を送る血管(肺動脈)の圧力が異常に上昇してしまう病気です。

詳しくはこのページを見てください。

小説で具体的な病名は出てきませんが、映画『余命10年』で「肺動脈性肺高血圧症」という文字を読み取ることが出来ます。

※2009年「原発性肺高血圧症」→「肺動脈性肺高血圧症」へと名称が変更されています。

この病気の診断を受けるには右心カテーテル検査を受ける必要があります。その時の体験談は別の記事にまとめました。


小説内で遺伝が原因と書かれていますが、僕には同じ病気の家族や親戚がいないので、特発性(現時点での原因不明)の肺動脈肺高血圧症となっています。僕の場合はかなり早い段階で発見され治療を開始することが出来ました。なので、日常生活に大きな支障や制限などは今のところ出ていません。

小説の舞台となっている時代と現代(2023年)では状況が変化してきているように思えます。僕が治療として飲んでいる薬は、2007年にはまだ承認されていなかったようです。小坂流加さんが『余命10年』を描いていた時のような、治療法がほとんど確立されていない状況を想像すると胸が苦しくなりました。より医療技術が進歩し、治療法が確立され、治療にも様々な選択肢が増えることを願っています。


「恐かった」という感想について

僕がこの『余命10年』を読み終わって一番最初にでてきた感想は、「泣いた」や「感動した」ではなく「怖かった」でした。

この物語の中で主人公の茉莉さんは亡くなります。これはほとんどの読者も事前に予想していたと思います。僕も主人公が亡くなってこの小説は終わるんだろうなと思っていました。読む前から主人公の死を予想していたのにも関わらず、茉莉さんの死の直前の描写では読むのを止めてしまいたいほどの恐怖を感じました。「死」というものは自ら経験して、体験談のように書けないはずです。しかしその場面は、実際に経験して描いたような緊迫感とリアルさがあります。

僕は高校生になってから主に小説を読み始め、ミステリー、サスペンス、ホラーというジャンルが特に好きで読んできました。なので小説内で「死」というのは頻繁に描かれています。しかし、『余命10年』で描かれた「死」を表現する文章は、僕には目を逸らしたくなるような描写でした。その描写を今思い出して怖くなります。このように感じたのは、主人公の茉莉さんと僕が近い場所にいるからなのかもしれません。


僕のこれから

先ほど書いたように、『余命10年』を読んで一番最初の感想は「怖かった」でした。しかし、それ以外にも考え、感じたことも多くあります。

僕は茉莉さんと同じ病気の診断がつきましたが、幸い早期発見です。なので、余命何年とは言われてはいません。それを踏まえると、この『余命10年』で描かれていることは、僕の中ではまだ1ページも始まっていません。(入院をして、診断がついただけ)

ただ、人間として生まれたからにはいずれ死ぬ時がきます。その時期はいつやってくるのか誰にもわかりません。僕はまだ生きている内にやりたいことがあります。まだ読みたい小説はたくさんあるし、ずっとやってみたかった音楽活動も始めてみたいです。また、たくさんの人と話をするために英語も勉強したいです。今一番やりたいことを別の記事に書いたので、読んで頂けると嬉しいです。

改めて、僕の中でこの『余命10年』は間違いなく重要な1冊になりました。読むのが苦しい場面もありましたが、この作品と出会うことが出来て良かったと思います。また、家族、友人、医療関係者、それだけではなく毎日生活を支えてくれる様々な人のおかげで、今自分が生きれていることを再認識しました。そして、今生きられているといことに感謝し、1日1日を大切に毎日を過ごしていきたいです。

今回のnoteはこれで以上になります。

最後まで読んでくださったみなさん、ありがとうございました!

佐藤僚太

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