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方向性

どのように書くにせよ、人間は主観からはにげられない。出来うる限りの客観性を大切にすることを考えはするにせよ。それ故、入門書を書くというのは、ある意味で大家しかできないし、我々もその点を考慮に入れて読むべきだと思う。

さて、釈徹宗先生の著作である下記の本は

確かに読みやすく、かなり簡単に読み終わらせることが可能である。しかも、「ミリンダ王の問い」なども扱い興味深い。

Kindle版で購入し、読んだが負担なく読める入門書だと思う。この本の特徴は、入門書なのだが、日蓮宗の僧侶、法華経になれ親しんだ立場からみると浄土教にいたる物語とも読める点にある。

「ミリンダ王の問い」の中に 

ここに「念仏によって悪人が救われる」という仏教思想が提示されています。 仏の救いの力は大きな船のようなものなので、仏に我が身をゆだねることができれば、本来は水に沈むような存在でも救われるんですよ、という理路です。この問答は、『ミリンダ王の問い』でも古層である前半部に出てきますので、大乗仏教の勃興以前からこのような教えが説かれていた可能性を見て取ることができます。

と述べて、声を上げて念仏を唱える称名念仏へいたる道すじを述べています。ある意味で浄土教的仏教入門書の部分もあります。

一方で、「阿弥陀経」の「今現在説法」の説明では、

 この「今現在説法」は、宗教の本質に関わる問題だと思います。宗教は、つねに「この教えは、今・ここで・私自身を問うているのだ」との受けとめがなければ成り立ちません。禅仏教などでは、これを「即今・当処・自己」などと表現します。

と書かれており、仏教、宗教の視点、メタ認知的要素も持っています。この2面性のバランスが上手いなーと感じます。

釈先生の仏教認識を知るには、よい一冊だと思います。

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