カトリーヌ・ドヌーブ

是枝裕和の「真実」を観た。
小津安二郎がフランス映画を作ったら
こんな作品になるのではと思った。
女優の母と一人娘の確執を描いた。

国民的大女優の母が老いて、
奔放な母に苦しんだ娘も親となった。
母の書いた自伝の嘘を娘は許せない。
嘘によって明らかにされる真実。

母から愛されていなかった、
そう思っていたことは誤解だった。
母は娘を心から愛していた。
母には芝居という仕事があっただけだ。

カトリーヌ・ドヌーブは70代半ば、
若い頃の眩いほどの美しさはないが、
風格と貫禄はカリスマ的でさえある。
まさに大女優ここにありだ。

ドヌーブの役名はファビアンヌ。
これは彼女の本名である。
まさに劇中の女優ファビアンヌは
ドヌーブそのものであったと言っていい。

だからこそリアリティがある。
最後にお互いをわかり合え、
抱き合う母娘のシーンは
心に染み渡るものだった。

この映画後にドヌーブは脳卒中で倒れた。
大事に至らず復帰を果たしたが、
女優として後どこまでやれるのか、
僕はファビアンヌと重ね合わせてしまった。