ある男の命日

尊敬していた
数栄さんの命日だった。
鉄人と呼ばれていた男。

会社を辞めて
住み慣れた都会を離れ、
田舎暮らしを始めた。

若い頃は登山家で
モンブランや
マッターホルンも踏破。

結婚して山を降り、
ゴルフにのめり込み、
腕前はシングルに。

苦手な水泳を克服、
トライアスロンにも
挑戦して友を増やした。

数栄さんが死んで
あっという間に
11年の歳月が過ぎた。

愛する妻君子さんも
歳を取ってきた。
彼らの田舎を訪れて
お墓参りをしたい。
時間はありそうでいて
それほどないのだ。