ヒヨドリのグリル

「ヒーヨ、ヒーヨ、ヒーヨ」

ヒヨドリが甲高く鳴き立てる。

体が大きく尾も長く嘴も鋭い。

羽の冠を立てた頭部と

荒々しい姿は悪代官を思わせる。


梅の花の蜜を吸いあっている

仲むつまじいつがいの可愛い

メジロをいきり立って追っ払う。

黒いカラスも忌まわしいけれど

ヒヨドリも好きになれない。


それなのに好きな人もいる。

「ヒヨドリは美味いのよ」

ニヤリと笑ってそう言う。

その人は庭に網を張り、

ヒヨドリを捕獲する。


茹でて羽をむしって胸骨を開き

心臓、レバー、砂肝を取り分け、

ミカンを肉に入れてこんがり焼く。

果実を食べているヒヨドリは

肉が抜群に美味いそうだ。


都会で味わえる本物のジビエ。

ワインは赤、シラーが合いそうだ。

ヒヨドリのグリル!

僕が縄文時代に生きていれば

きっと食べていたに違いない。