50年ぶりのU

僕らはブラスバンド部だった。

Uはトランペットを吹いていた。

僕はテナーサックスだった。

マーチばかり演奏させられた。

運動会が僕らの活躍の場だった。


トランペットは勢いがいい。

遠くまで鳴り響く。

Uはここぞとばかりに

ペット隊全員で立ち上がり、

高音を奏でていた。


僕らサックス隊は

僕のテナーとSのアルトの

2人だから勢いがない。

それでもメロディが吹けるから

楽しく演奏していた。


ペットとサックスが

一緒になるときはご機嫌だ。

先生の指揮棒に合わせ、

お互いの音を聞きながら

思いっ切り吹きかました。


スポーツではUはテニス、

僕はバスケだった。

お互いの試合を応援した。

それぞれ好きな女の子と

一緒になって声を張り上げた。


あれから50年が経った。

Uは富山の女性と結婚し

そこでずっと暮らしている。

いろんなことがあって、

この間、20年ぶりに話した。


懐かしかった。

「大雪だよ」とUは言い、

それだけで笑った。

やっぱりUは

僕の大事な友達だと思った。


「会わずに死んじゃうぞ」

そう僕は言った。

Uは涙ぐんでいたかも知れない。

僕も涙が出そうだった。

「そうだよな、うん」


もはや言葉などいらなかった。