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鈴の音のさよなら

お盆は終わりましたが、夏なのでちょっと不思議な体験を書いていきます。


私がおそらく小学4年生くらいのころ、父方の祖母が老衰で亡くなった。

お葬式のため父方の実家へ行った。


お葬式のルールはあまり詳しく知らないが、和室に祖母が横になり白装束に身を纏っていた。

おそらく葬式屋さんが着せてくれたものだ。
そして葬式屋さんが、

「これからおばあちゃんは49日間この世を旅します。」

「旅には持っていく物があり、巾着・お金・杖・鈴。」(もっとあったかもしれません)

お金は、どうやら三途の川?を渡るときに必要で、(金取るんかい!!!)

巾着の中身は何入ってるか忘れた。お金だったかもしれない。

そして、鈴は魔除けの役割があったり、鈴の音で存在を示すのだ。


そんな感じで49日間の旅に必要な物を持たせた。

触れた手はとても冷たく、その冷たさは冷蔵庫のような冷たさとは違い、再び暖まることはないと感じられる、芯からの重たい冷たさだった。


漫画タッチでこんな台詞がある。

「きれいな顔してるだろ。ウソみたいだろ。死んでるんだぜ。それで…。」


祖母に生前最後に会ったのはいつだろうか。
人は生きているのが当たり前と思っているが、死ぬのも当たり前。

死ぬというのは悲しくてネガティブな事だが、生きている限り、必ず死ぬ。

穏やかな顔で生を全うした祖母から、この世の未練は感じられなかった。

そうだ、死ぬのが悲しいのでは無くて、別れるのが悲しいのだ。と思った。


また会えると思ったら少し気が楽になった。




その日の夜、2段ベッドの下で寝ていたら


「チリン、チリン、チリン、チリン…」


と鈴の音が聞こえてきた。
その音は一定のリズムで私の耳に刻まれていく。

目の前は真っ暗だが鈴の音だけが絶えず、ずっと聞こえてくる。

私は聞く事を止める事は出来ないし、目を開けることも出来なく、流れに身をまかすことしか出来ない。

ただ、怖さは無く何かを待っているような気分。

そして、真っ暗な中から、ぼんやりと何かが見えてきた。鈴の音は止まらない。


その後、ぼんやりした何かは、祖母の背中になった。

もしこれなら夢なのであれば、夢の中に祖母が出てきたのだ。

しかしながら、声を掛けることも掛けられることもなく、ただただ鈴の音を鳴らし、離れていく祖母の背中を見送るとこしか出来なかった。


きっと、さよならって言いに来たのだろうか。


最後に見た祖母の背中は、決して冷たくなく、芯からの暖かみを感じた。

鈴の音は今でも鮮明に覚えている。


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