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プロティアン・キャリア【キャリア理論】

キャリアカウンセリングに関する理論の紹介と、それに対して感じたこと、考えたことを書いてみるシリーズです。

今回は、ダグラス・T・ホールの理論を紹介します。
ホールの考えるキャリアの定義は、

「生涯にわたる期間において、仕事に関する諸経験や諸活動と結びついており、個人的に知覚された一連の態度や行動である」

と、しています。
ホールは、貢献と利益による短期的な契約など、産業社会の構造的な変化を背景に「キャリアの主観的側面」を強調しています。
そして、

キャリアは個人によって形成されるものであり、移り変わる環境に対して、自らの欲求に応じて方向転換し、個人の心理的成功を目指す

とする「プロティアン・キャリア理論」を発表しました。
予言と変身の能力を持つギリシャ神話のプロテウスにちなんで、変幻自在なキャリアを表しています。

ホールは、プロティアン・キャリアにおける心理的成功のためには、「アイデンティティ」「アダプタビリティ」が必要だと主張しています。

まず「アイデンティティ」とは、自身の興味・価値観・能力などに対する自己理解の程度、および過去と現在と未来の自己概念の統合の度合いです。

次に「アダプタビリティ」とは、

①反復学習
(役割行動を発展させたあり最新のものにしたりする)
②アイデンティティの探索
③統合力
(自分の行動とアイデンティティの一致を保ち、環境の変化にタイムリーかつ的確に応える)
④適応モチベーション
(①~③を発展させたり、現状に対して応用させようとしたりする意志)

この4つを意識的、かつ継続的に行おうとする傾向及びその準備度であると定義されています。


ここまでかたい表現になってしまいましたが、僕自身の解釈でいくと、

「アイデンティティ」とは、自己理解とそれによって描く未来の自分のありたい姿であり、
それを自身の周り、組織内や社会と適合させることが「アダプタビリティ」。
その両方をつなぐことで「心理的成功」となる。

こんな感じでしょうか。

アイデンティティを見つめ、自身の周り、組織内や社会と適合させる。

適合させる、と書きましたが、そのためには環境の変化を読み取り、そこへ自身のありたい姿をすり合わせることが必要な気がします。
すり合わせるとは、自身を無理に変えることでも、無理に押し通すことでもありません。
環境の変化に対し、自分のできることやしたいことは何かを考え、そこへアプローチすることです。


プロティアン・キャリア。
変幻自在なキャリア。
主観的側面を強調したキャリア理論。

現代は、「個の時代」と言われていますが、
どんなに社会の構造が変化しようとも、人は一人では生きられません。
一人きりで完結できることは、ないのです。
影響を与え合い、頼り合い、迷惑をかけ合いながら生きています。
その中でも、「個」、「自分のアイデンティティ」を見つめることは大切で、そこに余白を持たせ、揺れるように周りと関わり合っていくことが「心理的成功」に繋がっていくように思います。


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