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#旅行記
十月の牛窓の思い出 ②
(この記事は後半です。前半はこちら)
オリーブ園へと繋がる傾斜のきつい坂道は、永遠に続くかのように思えた。
自転車のペダルはまるで泥の中で漕いでいるかのように重い。先程まで心地よいと感じていた足の疲れは、シグモイド曲線のように急激に曲率を変化させ、鈍い痛みとなって僕を襲ってくる。さらには空気の塊のようなものが喉につかえて、上手く呼吸ができない。
街中を颯爽と駆け抜けていたはずの僕の自転車
十月の牛窓の思い出 ①
岡山県の東に位置する瀬戸内市の牛窓町は、穏やかな内海に面した、風光明媚な土地だ。
僕は先日、五年ぶりにそこを再訪した。
よく晴れた日で、十月に入ったにもかかわらず、外は半袖でも少し汗ばむくらい暑い。丘の上から見下ろすと、海と空の間に水平線がすうっとまっすぐに伸びている。波ひとつない海面と、雲ひとつない青空は、そのまま逆さにすれば、どちらがどちらかよく分からなくなってしまいそうだ。どんより曇