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本のこと

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本に関するあれこれ。とりとめなく書いています。
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#エッセイ

徒然草のリズムで

徒然草のリズムで

「仁和寺にある法師、年寄るまで、石清水を拝まざりければ、心うく覚えて…」

「神奈月のころ、栗栖野という所を過ぎて、ある山里にたづね入ることはべりしに…」

「高名の木登りといひしをのこ、人を掟てて、高き木に登せて梢を切らせしに…」

昔から吉田兼好の『徒然草』が好きで、少し前に読書会の課題図書として皆で読みました。

初めて『徒然草』を読んだのは国語の授業のときでした。軽妙な語りのリズムと鋭い視

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原田宗典を読んでいたころ

原田宗典を読んでいたころ

 十七、八歳の頃、ずいぶん原田宗典さんの本を読んだ。軽妙な随筆とは反対に、彼の書く小説の主人公はみな、どこか卑屈で、じめじめした奴らだった。傲慢な高校生だった僕は、ちっぽけな自分と向き合う方便として、彼らの惨めな物語を貪欲に吸収した。彼らの惨めさを笑いながら、自分の惨めさと何とか折り合っていた。
 でも、大学生になってしばらくすると、本棚にずらりと原田さんの本を並べているのが何だか恥ずかしくなって

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