見出し画像

R2-2|目標を目指す者は、やがて大きな山を越え、200グラムの山を築く。


トントンカチカチ、トンカチカチ。

トントンカチカチ、トンカチカチ。

トンカチという道具は、釘を打つ音から名前がつけられているらしい。


トントンパチパチ、トンパチパチ。

トントンパチパチ、トンパチパチ。

そして、トンパチというお店は、K氏がいま開店に向けて熱を上げている本格二郎系ラーメンの店の名前だ。


・・・お久しぶりです。

また、この筆を執ることになろうとは予測していませんでした。

でも、未来はいつも予測不能です。
そして、K氏の行動はいつも不可解なのです。

彼の行動は、いつも予測の右斜め 53.2° あたりをいく。

止まっていた時間が動き出した。
この日誌も次のページをめくる時がきたんだと思う。


これまでのあらすじ

前回、K氏の話をしてから、随分と時間が経った。
何の話だったか、ほとんどの人が忘れてしまったと思う。

最初に言い訳をさせてほしい。
実は、しばらくK氏と会わない期間があった。

・・・いや、違う。
それは、日常を一変させてしまった新型コロナウイルスが理由じゃあない。

いま振り返ってみると、K氏の計画は壁にぶつかっていたのだ。

コロナ禍をものともせず、「ラーメン屋を作るんだ」と目を輝かせ、太い豚骨と出店予定の古い床をハンマーでぶち割っていたK氏だったが、やはり、そんなに甘いものではなかったのか。


幻のラウンドツー

前回の日誌を書いて、もう 10 ヶ月になる。
当時、K氏に声をかけてもらった僕は、ラーメン屋ができるはずの空き店舗に向かい、K氏を待っていた。

ああ、そうだった。K氏は来なかった

ただ、僕の目の前には確かにラーメン屋を目指して、順調に解体工事が進む空き店舗があったのだ。

だから、それ以降、近くを通るときは必ず、工事の進捗状況を確認するために店舗の入り口を覗くようにしていた。

・・・

しかし、それから大きな変化はなかった。

僕も、慌ただしく日々の仕事をこなしていて、こちらからK氏に状況を尋ねることもなかった。

ラーメンのレシピが完成しなかったのかな。
急速に熱くなった反動で、もう飽きてしまったのかな。

そんなことを思いながら、少し寂しくも感じていた。

「店の名前は、"ラウンドツー" でどうだろう?
 近くに似た名前の施設があるし、二郎だから " 2 " が入ってる名前。
 それに、コロナで停止してしまった民泊に続く第 2 の挑戦だし」

そんなふうに、店名をどうしようかとワイワイと議論していたことを思い出して。


後から聞けば、実際に納得できるようなスープができず、思うように進捗していなかったのは事実らしい。

しかし夢追い人には、思わぬ姿でチャンスの女神が現れるものだ。


幸せの青い鳥

それは、幸せの青い鳥の姿をしたチャンスのかけらだった。

世界にはいま、40 ゼタバイトという単位の情報に溢れているらしい。
世界中の海岸の砂粒の数と、同じくらいという膨大な量だ。

その中から、たった 120 文字しかない情報。

青い鳥が連れてきた、その小さな小さな儚げなツイート。


それを彼は見逃さなかった。


「全国に暖簾分けしている、二郎系ラーメンの店が高知でオーナー店主を募集している…!」

久しぶりに会ったK氏は、興奮気味に話した。

「この店、やらせてもらえないかな…!」

そう言って立ち上がると、もうツイートの発信者に DM を送っていた。


そこから数日間、LINE や電話でラーメン屋のオーナー店主の話が進んでいると、K氏から報告が送られてきた。

そして、さらに数日後・・・


「友だちの店長候補を、愛媛県に修行に行かせた」

なぬ・・・!?

暗礁に乗り上げる寸前だったK氏を乗せたラーメン船。
さっきまでは確かに、コンパスも失い、帆には穴が空き、推進力を失っていた船だったはず。

しかしK氏は、前触れ無く目の前に現れたクルーズ船に「ポンッ」と飛び乗って、また意気揚々と海原を漕ぎ渡りだしたのだ・・・!

何だ、この少年漫画の展開・・・


高知の緑の西

K氏の勢いは、そこから止まらなかった。

前回同様、それから少しの間、自分の仕事に追われて連絡を取っていなかったが、次に連絡があったときには、新しいラーメン店の住所が決まっていた。

高知の皆さん、高知グリーンホテルの西側です!

もう、看板がついているので、今回は本当にオープンできそうです!


その名は、豚パチ(とんぱち)

メニューは、二郎系ラーメンです。


味は・・・美味い、らしいです。


ごめんなさい。

あれ、そういえば、僕はまだ味見をさせてもらってなかった。

それどころか、人生で一度も "二郎系ラーメン" なるものを食したことがないぞ、そういえば。

しかし皆さん、こんな諺(ことわざ)をご存知だと思う。


美味いもの、だいたい茶色。


「友だちと試食したんだけど、これはイケるって!!」


大きいサイズのアイスコーヒーを一口飲んで、ニヤリとするK氏の顔には、"自信アリ" と書かれていた。

美味いもんは、大抵茶色です


美味いもの、だいたい茶色。

はい、リピートアフタミー。

美味いもの、だいたい茶色


ありがとう。
今あなたの頭に浮かんだ食べ物を当てることもできる。

・・・かもしれないが、そんなことをしても無益だ。

それよりも、どうかK氏がついに完成させる美味いであろう “茶色” を楽しみにしてほしい。

なぜ、食べたことがないのに味だけでなく、色がわかるのかって?

もちろん、K氏が LINE で送ってくれた「ラーメン」「油そば」の試食写真が、茶色だったから。

画像1


目標を目指す者は、やがて大きな山を越え、200グラムの山を築く。


「本格二郎系ラーメンって、看板に書くんだけど、
 何が "本格" なのかってことを伝える必要があると思う」

アイスコーヒーをもう一杯飲んだK氏が、少し真面目な顔つきで語りだした。

「ほとんどの二郎ラーメンって、デフォ(デフォルト)が 300g あるんですよ。だけど、300g って正直、普通の人はキツい。食べきれない。」

K氏は続ける。

「ラーメンの汁って、油が多いから、はっきり言って環境に良くない。食べきれずに残したらゴミになってしまう。
 だから、食べ切れる 200g をデフォにするのがいい。
 味は、もちろん本格二郎系。」

「環境に配慮して、残飯を捨てずに再資源業者に引き取ってもらう」

予測不能な行動をしているようで、こういうピースフル?なところがあるK氏を、僕は好きだし尊敬している。

なんだか、いいお店じゃあないか。


ラーメン屋完成まで、あと○○日

あと何日でラーメン屋は、完成するのか?

< 5/11追記 >
本日、オープンしました・・・!

ニンニク、入れますか?
店名: 本格二郎系ラーメン 豚パチ
住所: 高知市はりまや町 3-1-11 グリーンホテル1F(西側)
営業時間: 11:30〜21:30予定(不定休)

気に入っていただけたら、サポートいただけると嬉しいです! コミュニティ活動や学習に使いたいと思います。