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【第2回】北斎づくしバックストーリー【グラフィック編】

こんにちは、北斎づくし運営です!

北斎づくしの裏話をお伝えする「北斎づくしバックストーリー」。

第2回は【グラフィック編】をお届けします!

コズフィッシュの祖父江慎さんディレクションのもと展覧会をより一層華やかに見せたメインビジュアルや会場のグラフィックの数々。いったいどのようにして誕生したのでしょうか?

インタビューは展覧会主催の凸版印刷株式会社 文化事業推進本部の 八木克人さんです。

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①ご担当を教えてください。

主にチラシやポスター、サイネージなどの各種告知ツール、会場グラフィックの制作&ディレクションを担当しました。

②特別展「北斎づくし」へのこだわりや見どころを教えてください。

◇メインビジュアルについて

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△特別展「北斎づくし」メインビジュアル(チラシ)

まず、メインビジュアル完成までの経緯についてお話ししますね。

最初のメインビジュアルのラフデザインが上がったのは、展覧会の名称がまだ”特別展「北斎/HOKUSAI 2020」”だった2019年12月。本展でもご活躍いただいた、アートディレクター・祖父江慎さんが、『北斎漫画』コレクター・浦上満さんのギャラリーでもある「浦上蒼穹堂」を訪ねた際に、『北斎漫画』の中の「風を描いた絵」に興味を持たれました。その中から十二編の顔の見えない現在のモチーフを選びました。

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△『北斎漫画』十二編 浦上満氏 蔵

私の独断で飛んでいる紙は同ページ、紙から鳥になるモチーフは十編から引っ張り合成して祖父江さんにお見せしたところ、気に入っていただきメインビジュアルのメインモチーフが決定しました。

ティザーおもて

△当初のメインビジュアル案

当初はメインモチーフと「北斎」という文字、風をモチーフにした「冨嶽三十六景 駿州江尻」の富士山(敢えて版ずれさせている)が重なったビジュアルで、マゼンタ部分には蛍光ピンクの版を重ねた強いビジュアルでした。

ティザー裏

△当初のチラシの裏面。号外のような見出しをイメージ。

チラシの裏面は昔の号外のようなイメージで、太いゴシックでかすれたスミを刷る予定でした。
尚、祖父江さんとしては「格好良すぎてちょっとどうかな、」という印象で、一押しの踊独稽古の裏メインビジュアルも作っていました。

裏メインビジュアル

△裏メインビジュアル。現在のビジュアルにより近いかも。

ティザーチラシの色校再校まで進んでいたところで開催が1年延期に決まりました。半年以上間を空けた2021年の年始ごろから、展覧会名を「北斎づくし」とあらため再スタートしましたが、当初の2案の合体案として、現在のメインビジュアルの方向性が決まり、色もモノトーンに近いイメージとなりました。
その後、用紙やインキの仕様決めから再スタートし、検討を重ね、用紙は日本製紙の白銀という包装紙に使われる薄い紙の裏側に刷る案で決まりました。
[参考:日本製紙-白銀]

用紙決め打合せ

△コズフィッシュの祖父江さん、藤井さんと用紙検討中。

また、ポスターはチラシと刷りの仕様を変えて白インキは使わず、特色銀を使用しています。背景にある『踊独稽古』の図柄は全て銀で刷っているんです。歩いてポスターを見るときの光の反射で『踊独稽古』に動きを感じさせる演出を狙っているのではないかな、と思います。

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△背景が特色銀で刷られたポスター。

◇会場グラフィックについて

文化事業推進本部では文化財のデジタルアーカイブをし、保存・活用を目指しているのですが、そのアーカイブデータを利用して今回、展覧会会場のグラフィックを制作しています。実サイズ5cm程の絵を最大1mもの大きさに拡大して印刷するにはどのようにスキャンしてどう画像を拡大すればよいのか…社内の製版やグラフィックを担当する部署に相談しました。

見開きで4億画素もの高解像度で撮影、PD(プリンティングディレクター)の指示のもと凸版印刷の製版所にて拡大印刷のテストを繰り返しながら祖父江さんに色味やレタッチの指示をいただくという作業工程がありました。

出力は脇プロセスという外部プロダクションで行なったこともあり、色調整は全て社内製版の段階で行う必要がありました。かつ、床はパンチカーペット、壁面とバナーはトロマット(布)と経師、といった全く異なる素材で色味を合わせることは至難の技でした。最終的に色味を無彩色に近づけることによって合わせこむことができました。

③大変だったことはありますか。

大規模な美術展覧会の主幹事、という凸版印刷で初めての試みであり、どうやって作っていくか、というノウハウを社内スタッフが誰も持ち合わせていなかったということ。どのように展示コンセプトを決定し、どのようにスケジューリングするか、予算をどう管理していくか。世界的なトップクリエイターや協業先など多数の個性豊かなスタッフをまとめてイニシアチブを取って進行管理すること。この辺りが一番チームリーダーは大変だった部分だと思います。
私の最初の担当の告知ツールに関して言えば、納品日は決まっているものの、全体のコンセプトがなかなか定まらず、デザインが進められない、ということがありました。

制作物は膨大であり、スケジュールは日に日にタイトになっていく。そのような状態で祖父江さんにデザインを依頼していたので、大変失礼なお願いの仕方をしていたと思います。

会場グラフィック含め、大量な制作物に対してスケジュールがあまりにもなかったこと。その中で1点1点妥協なくとことんこだわってデザインしていただき、感謝しかありません。

これだけ密に、それも対面で祖父江さんのデザイン業務に関われたことは貴重な体験になりました。


④イチオシの北斎作品は?

『北斎漫画』、「冨嶽三十六景」、『富嶽百景』は有名であり一度は目にしたことのある絵が多いと思いますが、今回、その三大北斎以外を祖父江さんが強く押していた作品群の中のひとつとして、『椿説弓張月』や『新編水滸画伝』などの「読本挿絵」はどれも見応えがあります。やはりストーリーに合わせて描かれているだけあって、キャラクターが生き生きと紙面上を躍動しているように感じます。迫力ある効果線などの演出は現代のアニメや漫画に通ずるところがあり、これら一連を見ると、北斎漫画よりも「読本挿絵」のほうが現代の日本の漫画に繋がっているんじゃないかと感じざるを得ません。

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△『椿説弓張月』に描かれる北斎の挿絵

⑤これから「北斎づくし」にご来場される方に向けて

やはり一流のクリエイターが集結して作られた展覧会だけあって、今までに見たことのない北斎展になっていることは間違いありません。浦上さんのコレクション作品を一挙公開するための、建築家・田根剛さんの空間設計、アートディレクター・祖父江慎さんのグラフィック、ライター・エディターの橋本麻里さんのテキスト、そして凸版印刷ならではの印刷で埋め尽くした正に「北斎づくし」の世界観。
江戸の天才絵師と現代の奇才天才クリエイターの時代を超えたコラボは必見です!

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インタビュー:八木克人(凸版印刷株式会社 文化事業推進本部)                  編集:三澤(北斎づくしSNS担当)



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公開期間▶︎2021/9/23(木)-10/10(日)

公開場所▶︎展覧会公式サイト https://hokusai2021.jp/special/

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