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本の目録を作ること②~たとえば、「情景ことば選び辞典」~

はじめに

冬の気配を感じる。

部屋で眠っている本を目録として記録していくなか、「情景ことば選び辞典」を見つけた。


目録作成初回のnoteの記事はこちら


「情景ことば選び辞典」は創作に役立つのでは!と意気込んで購入したが、めっきり中身を見ていなかった。
ページを開くと、素敵な言葉たちのオンパレード。なぜわたしはもっと早く読まなかったのか……後悔したが、この機会に出会えたのだからよしとしよう。

琴線に触れた言葉たちを、わたしの独断と偏見から七つ選び、『日本国語大辞典』ですこし意味を調べてみた。
口ずさみたくなるようなものばかりで、明日から誰かに話したくなること請け合いだ。

「情景ことば選び辞典」より美しい言葉七選

・鱗(うろくず)
魚の鱗のこと。転じて魚。
日本国語大辞典によると、古くは「いろくず」らしい。
魚たちが鱗を光らせて、ひしめきあっている光景を想像した。漁港の水揚げなんか、鱗(うろくず)の巣窟なんだろうな。

・秋の湊(あきのみなと)
秋が終わろうとするところ。秋の果て。
これからの季節にぴったりで、「湊」という表現が気に入って選んだ。紅葉の終わりかけくらいのイメージだ。は~~エモい。

・春の湊(はるのみなと)
春の行き着くところ。春の果て。
春が行き着くところを、船が止まる港にたとえていう。
日本国語大辞典によると、初出が945年頃の『貫之集』。秋の湊よりも早い。(秋の湊は1716年に『俳諧・俳諧通俗志』が初出)
春が行き着くところ……春の果て。うーん、ロマンチック。

ちなみに「夏の湊」「冬の湊」も探したが、辞典にも本にも載っていなかった。「~の湊」は秋と春だけのようだ。

・火点し頃(ひともしごろ)
夕暮れになって明かりを灯す時刻。
ポケモンにヒトモシというのがいたなあ。
家々の明かりがぽつぽつとつき始める時間帯のころだろうか。

・袖笠雨(そでがさあめ)
袖を笠のかわりとしてしのげるほどの弱い雨。
初出は1967年の「浮世草子・好色具合」。
これは現代にも通じるし、傘をさすほどの雨は袖で前を覆って防ごうとするなあ。いまも昔も、袖で雨をしのごうとしていたのだろう。エモい。

・鯖雲(さばぐも)
さばの鱗にある斑紋のような雲。秋の空によく見られる。
これからの季節にみられるかもしれない。鯖雲。
鰯雲よりも、お腹が空きそうな響きだなあ。

・湯花(ゆばな)
お湯が煮えるときに上がる泡。
温泉の成分が沈殿して取り出したもののことも表すようだ。
お湯を沸かすときに、「あっ湯花が咲いた」なんて思うと、心があったかくなる。

このほかにも美しい言葉はたくさん見つけることができた。

※日本国語大辞典について

日本国語大辞典とは、ありとあらゆる言葉を網羅している国語辞典だ。ほかの辞典よりも優れている点は、その言葉の初出(文献上に登場した初めの書物と年)が明らかになったり、時代を経た意味や語形の変化も知ることができる。
クッソ分厚いし巻数もあるので、紙媒体だととてもじゃないけど持ち運べない。


図書館には必ずある。WEBではジャパンナレッジhttps://auth.japanknowledge.com/auth/login/login/jk_lib/に登録すれば見ることができる。(月額料金がかかる)
電子辞書に追加するのも奥の手かもしれない。(わたしは電子辞書で見ている)



目録に書きつつ、掘り出した本を深堀りしていくのは楽しい。今回は美しい日本語を知ることができた。




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