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パソコンの画面を通してあっちとこっちでご対面?|創世の竪琴・その23

家に着いた渚たちはまず食事を取ると、明日のため武器や食料の点検をし、それからそれぞれの部屋に行って寝ることにした。

「渚、鍵はしっかりかけて寝るんだぞ!」

「分かってます!」

部屋に入ろうとする渚にイルがきつい口調で言った。

その夜、渚はなかなか眠れなかった。ギームやイルの事が気になったというのもあるが、いよいよ本番、黒の森の魔導士との対決に向けて出発ということで興奮していた。

枕元に置いた女神ディーゼのイヤリングを見ながら、そして、あの魔導士、ゼノーを思い出しながら・・・・。

(千年前の予言に添って物事が起きている・・・・どういう事だろ?・・・分からないなぁ・・・。『闇王』に代わり、『闇の女王』・・・・ゼノーの言葉・・・・)

いろいろ考えているうちにいつしか深い眠りについていた。

ふと気がつくと渚はまた暗闇の中にいた。
遠くで前と同じように四角い明かりが見える。
渚は訳が分からなかったが、とにかくそこへ行かなくてはならない気がして走った。

「部、部長?」

そこには渚が入っているパソコン部の部長の顔が、どアップされていた!

「げろげろ~・・・・何、これ?」
圧倒された渚は棒立ちになった。

「洋ちゃん、いい加減にもう寝なさい!」
(あっ、おばさんの声だ。)

「うるせぇなぁ・・・くそばばぁ・・・。」
部長は小声でそう言うと手を延ばしてきた。

「あっ、部長、切らないで!」
聞こえるとは思わなかったが、渚は思わずそう叫んでいた。

-プッツ~ン!-

やはり無駄だったようだ。期待虚しく渚の周りは再び闇に包まれる。

(何、これ?やっぱり私、パソコンの中に入っちゃってるの?何で?どうして?)
暗闇の中、別の方向に明かりがあるのに気づき、慌てて渚は走って行く。

「ああーっ!ちーちゃん!」
今度の画面(?)には、やはり同じパソコン部に入っている同級生の結城千恵美の顔が写っていた。

「眠れない時はこれが一番なのよね。眠くなるまでやってようっと!
え~と・・・どこまで設定したかなぁ?今度のイベントは何にしよう?」

「ちーちゃん!ちーちゃんっ!」

勿論、渚の声は聞こえるはずがない。

-カチャカチャカチャ・・・・-

タイピングの音がしている。

「でも渚も調子いいわよね。最初の設定だけでイベントはよろしく、なんて。
そのイベントを考えるのが大変なのに・・・・。
でも面白いからいいけどね。
みんなでいろいろ案を持ち寄って作るんだし。
う~ん・・・でもこの先どうしよう?
黒の魔導士を倒して終わりだと短かすぎるし・・・う~ん・・・。」

祀恵の思案する顔が画面一杯に見える。

「ちーちゃんってば!」

渚はドンドン叩いてみた。
どうも友達の顔を叩いてるようで気が引けたが。

「だ~めだ・・・・ネタ切れ・・・・今日はもう寝ようっと。」

「ああ~っ、だめぇ!ちーちゃんっ!」

-プッツ~ン!-

周りは再び真っ暗になった。

「ちょっと、ちょっと・・・・マジにここって私たちが作ってるRPGの世界なの?
・・・な、何でそんなのがあるわけ?
・・・何で私が引き込まれなくっちゃならないのよぉ?
そ、そりゃ私が発案したんだけど・・・でも・・・」

う~ん・・

渚はそこへ座り込む。

部のみんなで作成中のゲームの世界が実在する・・・それでさえ信じられない事なのに・・その上、どうして自分だけここへ来れたのか。

夢だったら良かったのに・・・でも、これは確かに夢なんかじゃない・・。

いろいろな考えが渚の頭の中で渦巻いていた。


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