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介護福祉事業所の人事労務戦略室 ~次世代リーダーを育てる 連載第34回 「福利厚生②=老後2000万円問題にどう向き合うか」

こんにちは。ラボ事務局の杉田です。
今週もラボ代表及川による「介護新聞」連載企画(第34回)をお届けしてまいります。
第34回のテーマは「福利厚生②=老後2000万円問題にどう向き合うか」です。

 私達が今後直面する避けられない現実の一つに「老後2000万円問題」が挙げられます。この問題は、単に数字の問題を超え、私達の将来に向けた深刻な課題提起を意味しています。
 本連載は主に介護業界の方々を対象としておりますが、福利厚生の観点からこの問題に向き合うことは、全ての業界にとっての共通の課題かつ学びを提供するものになるはずです。

 本稿では、将来への不安要素を取り払い、職員一人ひとりが安心して業務に従事できる環境を整えるための具体的な提案を掲載していきます。ぜひご一読いただき、自社の戦略策定や施策実行の一助として頂けますと幸いです。

介護福祉事業所の人事労務戦略室 ~次世代リーダーを育てる
連載第34回「福利厚生②=老後2000万円問題にどう向き合うか」

 「老後2000万円問題」をご存じでしょうか?日本の公的年金制度は少子高齢化や経済状況などの影響で、支給開始年齢引き上げほか年金受給総額減少の可能性まで指摘されています。
 2019年に金融庁が公表した報告書では、夫婦2人が定年退職後30年間を過ごすためには公的年金だけでは足りず、約2000万円の貯蓄が必要との試算が示されました。

 2000万円は一つの試算に過ぎませんが、老後の生活資金に対する意識を高めることはとても重要です。介護福祉事業所が共に働く職員をけん引して未来に進むためには、職員の老後資産形成にも取り組まなければならないと、私は考えています。

 中央労働委員会の21年賃金事情等総合調査によると、全産業集計では定年による退職金平均受取金額1872万円自己都合退職金平均受取金額447万円。一方、介護事業所定年退職342万円自己都合退職72万円と、サンプル集計数が少ないことを考慮しても、圧倒的に少ないです。

 医療法人、社会福祉法人の一部では退職共済制度等全職員加入の積立制度を用意できるものの、民間の小規模事業所にとって退職金制度導入へのハードルはかなり高いのが現状ではないでしょうか。

 1800万円を超える退職金制度導入は、公定価格である介護報酬額の見直しや柔軟な人員配置基準を緩和しない限り無理だと言えます。総売上高に対して「人件費率60%で合格点」とも言われる介護福祉業界では、場合によっては60%後半の運営も珍しくありません。人件費には法定福利費を含みますので、退職金制度を導入することで人件費は膨大に膨れ上がります。

 しかし、これからの介護福祉業界は職員を大事にし、雇用定着を図りながら、地域の社会資源として職員と共にまちづくりを進めていくことが求められます。全スタッフの老後問題をカバーできませんが、介護福祉事業所が可能な退職金制度を考察してみたいと思います。

 中小企業退職金制度は
① 退職金積立金制度
② 退職共済制度
③ 確定給付年金制度
④ 確定拠出年金制度
―が主です。

 ①は企業が毎月一定額を積み立てます。会計処理は福利厚生費となりますが、職員の満足できる積立制度を導入する介護福祉事業所を、私は見たことがありません。

 ②は中小企業が共同で退職金を積み立て、専門機関が運用します。導入が比較的容易ですが、職員が満足できるような金額まで積み上がりません。さらに全額事業主負担で全職員が加入するため、①と同様人件費が大きく膨らみます。会計処理は福利厚生費です。

 ③は退職時に受け取給付額が入社時・制度導入時からあらかじめ確定している制度。運用リスクは企業が負担するため、資産価値がプラス、マイナスに変動したとしても、約束した給付額を職員に支払う必要があります。会計処理は福利厚生費です。

 ④は事業所と職員が一定額を拠出し、その資金を投資等で運用して得られる収益を退職金や年金として受け取る制度で、運用リスクは職員が負担します。会計処理は給与手当と福利厚生費を使用します。①~③は事業所が費用と運用リスクを負担し、④は事業所が費用、職員が運用リスクを負担する制度です。

 さらに④は投資による運用が特徴です。少子高齢化による税収減少が見込まれる日本では、老後資産を形成する手段として投資が常識です。2022年4月から高校の授業でも投資教育が義務化されているほど。

 私は介護福祉事業所の退職金制度に④を推奨します。導入ポイントは事業所がきちんと制度を理解し職員に説明できること、会計処理に給与手当の科目を使用できることです。

 導入コストや月額の手数料はかかりますが、①~③導入による莫(ばく)大な人件費率上昇は抑えることができ、若手から中堅職員の老後問題にも企業の責務として取り組むことができます。次回は確定拠出年金の導入と運用のアプローチを紹介いたします。

介護新聞9/29付「介護福祉事業所の人事労務戦略室―次世代リーダーを育てる!!」
http://wwu.phoenix-c.or.jp/~medim/kaigo/2023/202309kaigo/kaigo20230929.html

今週もご訪問いただきありがとうございました!
また次回、第35回の記事でお会いしましょう!

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