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いばら姫
凄まじいイバラの向こうに、幸せがいる。
眠りながらじぃっ、と待っている。
確かに、見えているのだけれど。
この茨をくぐりさえすれば手に入るのだろうけど。
…僕はまだ飛び込む決意ができない。
その昔母親に言われたんだ / ひとつ手に入れるときは / ひとつふたつ手放さなくちゃ / 本当の幸せなど来ないよ ってね
――斉藤和義 「それから」
口ずさんではみたけれど、歌詞の意味は分からない。
こんなイバラに飛び込んで、ズタボロにならなくたって、仕合せならそこらへんに転がってるし、
傷付いて、血を失ってまで、「本当の」幸せなど必要だろうか。
それは、「僕」にとって本当の幸せか?
言い訳だけを残して、
僕は街に戻った。
街では、やんごとなきお方が、かなりの装備であの城に向かったという話題でもちきりだった。
その後どうなったかは、誰も知らない。
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